
僕が大型バイク免許を取ったという話から、昨秋、Sと久々にツーリングの計画をしていた。ところが雨である。とにかくSと自分が合わさると雨になる。20数年経っても変わってないから困ってしまう。「お前が雨男のせいだ」とお互いに言ってるのだが…。やむなく延期した日も雨予報になったため再び延期したが、結果的には晴れてしまい、その次に延期した日には家庭の事情で中止せざるを得ない状況になり、そうこうしているうちに冬になってしまった。「じゃあ、来春にしよう」と言っていたのに春は過ぎ、ついに初夏を迎えようやく実現したのである。実は、この日も危うかった!週間予報では晴れだったにも関わらず直前に雨予報に変わり、またまた延期という話にもなったが、これ以上延期していると一生会えない気がしてきて、とにかく決行を決めたのだった。そんなわけで、山梨方面でキャンプという当初計画は変更し、南方面の方が雨になりにくそうということで、前日に南房総の白浜にある「南海荘ホテル」を予約したのだった。南海荘は、アタリだった。昔ながらの古いホテルではあるが、とにかく食事が充実していて、お客さんも多く、海に面した部屋の眺めはよく、温泉も満喫でき、コスパの高いホテルだった。ちなみに僕たちを不安にさせたのは、楽天トラベルの口コミ欄でみたこんなコメントだった。「これほどひどいホテルはない、すぐにでも改善が必要」。ノープロブレム、自信をもってオススメできるホテルだった!
赤信号で停まったり、道の駅でビワソフトを食べながら、はたまた野島崎灯台を散策しながら、昔話に華が咲いた。ネタは20数年分である。学生時代もそうやって、夜を徹して語り合っていた。Sの下宿でブリーフパンツ1枚になって語り合っていたところに、同居していたSの友人が彼女連れで帰ってきて恥ずかしい思いをしたこともあった。ホテルに着いてからも、仕事のこと、社会のこと、映画や本のこと、話題は縦横無尽、あちこちにとんだ。どんな話題でもよかった。僕らは堰を切ったように饒舌になり、お互いの知らない世界の話を枕に、心地よく眠りについた。
SR400
走行距離:199km
燃費:33.3km/L




雨は降ったり止んだりだった。そして、寒い。
しかし、バイクのエンジンをかけるときはいつも新鮮で、希望に満ちていた。
「用意はいいか?」
「OKだ!」
次は、摩周湖経由屈斜路湖行きのコースだ。
摩周湖に近づくとともに霧が濃くなるようだった。
そして摩周湖では、ガス以外何も見ることができなかった。
何も見えないところなのに、かなり沢山の観光客が来ていた。
考えてみると、面白い現象だ。
「大北海道ツアー」より
あの日のように、雨がぱらついていた。バックミラーを覗くと、バイクのヘッドライトが一つ、僕の後を追いかけてくる。一瞬で、懐かしさがこみ上げてきた。鮮明な記憶、というよりもう少し淡くおぼろげな感情が蘇ってきて、心は1987年の北海道まで一気に遡った。その年の夏、大学の友人SとTと僕の3人で、北海道をバイクで一周する旅をした。17日間、5,262kmの軌跡が心の奥に刻まれている。あの夏、あの3人だけにしか経験できなかったことを思い出しながら僕は、SR400の心地よいシングルエンジン音を楽しんでいた。
Sとは、正確には思い出せないが、20数年ぶりの再会である。久里浜のフェリー乗り場に現れたSは、20数年前のまんまだった。メガネをかけてないので訊いたら、数年前にレーシックをしたのだそうだ。よく見れば髪の毛も少し薄くなっていた。しかし、「別人」に変貌していたらどうしようという心配は杞憂に終わった。なかなか味のあるいいオヤジである。僕の友人は、大抵、僕自身が憧れる部分をもっている。こんな風な人間になれたらいいなって思う人を友人にしているんだろう。「しない後悔よりする後悔」はSに聞いた言葉で、最近も思い出したばかりだった。弱気になったり、面倒くさくなったりしたときに、この魔法の言葉が自分に力を貸してくれる。ありがたい言葉、ありがたい友人と「南房総で再会」である。
ツーリング後、Sに勧められてLINEを始めた。SNSに対して少々懐疑的だったので、つい先月までスマホさえ所有してなかったのだが、「食わず嫌いはよくない」とも言われて、やってみた。LINEアプリをインストールして、よくわからぬまま電話帳登録者全員に友達申請してしまって慌てたりもしたが、詰まるところは自分次第、だと思えた。Sの超オススメインド映画「PK」も観てみた。ラージクマール監督は、「きっと、うまくいく」で反体制派の人々を讃えたように、今作では、宗教がいかに悪用されているかを描き、権力者の嘘を宇宙人の目を通して暴いていくというユニークな作品に仕上げていて、とても面白かった。Sの方は、僕が勧めた「1984」をすぐに読み、「こんな世の中になってほしくない」という感想をLINEで送ってくれた。学生の頃、僕らの前には無限とも思える広大な未来が広がっていた。そのとき思い描いていた未来の大部分を現実にしてしまった今は、一抹の寂しさを禁じ得ない。Sに会って学生気分に戻ったせいで、余計に寂しく感じるのかもしれない。しかし、こうも思う。自分が知ったことなんてまだまだ世界のほんの一部に過ぎない。小さな小さな職場の人のことさえ、まるで理解しきれてないのだし、自らがもっと求めていけば、楽しい世界はきっと見つかるようにも思う。しない後悔をしないように、やるしかないだろう。Sとはまた秋にツーリングへ行く約束をして別れた。僕はアクセルを一気に回して帰路についた。またしてもレンタル返却期限5分前であった!(汗;)







