房総



2013/11/9-10

 産地表示の偽装も多い。酷いのは外国産を国産と偽る例。国産を求める消費者心理を欺く行為である。○○さん家の野菜というのも、近頃やたらと目に付く。いいことだと思う一方、どんな野菜だって必ず作っている人がいるんだから、名前が付いてるから安心とか安全ということはなく、うまく誤解してもらっているという感じがしなくもない。そんなニュースが多いので、ホテルの食事(バイキング)でも表示に目が行ってしまったのだが、見事に表示がなかった。唯一あったのが、千葉産コシヒカリ。たぶん、多くの食材は季節に応じて産地を変えながら仕入れているはずで、場合によっては複数産地が混ざることだってあっても不思議ではない。何事も過ぎたるは及ばざるが如しである。
 いつもバイクは、24時間レンタルをしている。追加料金を払えば延長も可能だが、とりあえず、時間に間に合うように走った。いつもギリギリになる。今回もである。アクアラインの入口を間違って大回りしたり、強風にあおられてスピードを出せなかったり、ベイブリッジ辺りでは小雨が降り、そうなるとカーブに鉄板のつなぎ目があると、滑りそうで速度を下げざるを得ない。そういうギリギリの状況で、首都高入口の料金所では、窓口のおじさんに声をかけられた。「なんてバイクなの?」「へ〜レンタルがあるんですか?」「いくらくらいするの?」などなど、大型免許をもっているのに全く乗ってないのだそうだ。「今度、レンタルバイク、探してみるよ」なんて言っていた。急いではいたが、そういう会話は楽しい。気楽なソロ・ツーリングではあるが、旅先でのちょっとした出会いが楽しみなのである。寒いのは懲り懲りなので、春になったら、また行こうと思う。

 「黄色いドゥカと彼女の手」という原田宗典(絵/沢田としき)の短編がある。主人公は18歳の「小僧」。日本で五本の指に入るカメラマン「先生」のアシスタントをやっている。まだ駆け出しで、本名が「コーゾー」だから「小僧」というわけだ。黄色いドゥカに乗っているのは「先生」の方で、「小僧」はSRに乗っている。乗っている車種は、主人公の嗜好や人格、ステイタスを表す上で重要なアイテムになっている。ある撮影の日、「手タレ」の女性リョーコに出会う。いつもレースの手袋を嵌めている彼女の手は、天使のように美しかった。二人はすぐにつき合いはじめ、すべてがうまくいっていた。いずれ独立したら結婚しようとコーゾーは思っていたのだが、ある日、黄色いドゥカの後部シートに乗ったリョーコを偶然見かけて、終わってしまう。彼の前ではどんなときにもしていた手袋を嵌めていなかった…。久しぶりに読み返してみて、やっぱり、面白かった。これだから、僕は本を捨てられない。読み返すことは滅多にないのだが、どうしてもブックオフに売ったりできないのだ。
 ドゥカティというと、僕はまずこの話を思い出す。イタリアのメーカーで、とにかく値段が高く、庶民が乗れるようなバイクではない。高嶺の花といっていい存在だ。今回レンタルしたモンスター400は最も安価な部類だろうけど、それでも100万超だろう。見た目にも美しいバイクだ。エンジンを始動すると、L型(つまり90度)に配置された2つのエンジンから小気味いい音が吹き上がる。だいぶ乗り慣れてからの話だが、アクセルを思い切り開けるとギュイーンと天井知らずの加速感が豪快だった。これが「走り屋」を虜にしている理由なのだろう。そして、冒頭の短編を思い出した。ドゥカティは小僧ではなく、渋い大人が乗って似合うバイクなのだ。

 今回のツーリングは、天気予報に大いに振り回された。結果的に、全国的に晴れるはずだった9日(土)は一日中太陽は顔を見せず、しかも冬のように寒かった。一方、雨になるといわれた翌10日(日)は青空こそないものの雨はなく、とても暖かいツーリング日和だった。ただ、強烈な風が吹いていて、帰りのアクアラインでは「風速8m」という表示があった。前を行く大型トラックが左右に激しく揺れるほどで、小さなバイクでは恐怖を感じるほどの強い横風がたまに方向を変えてくるから、ふらつきながらバランスをとり続けるのに必死だった。

DUCATI MONSTER400
走行距離:338km
燃費:22.9km/L

 くるりというロック・バンドがある。ヴォーカルの岸田繁は熱心な鉄道ファンでもあり、ライブのMCで久留里線の話をしていたこともあった。バンド名とは関係ないらしいが、前々から気になっていたので、立ち寄ってみた。
 紅葉にはやや早いのだが、養老の滝(粟又の滝)へも行った。居酒屋といえば「養老の滝」という時代に学生だったから、何となく親しみを感じてしまう。しかしながら、ちょうど着いた途端に雨が降り始め、元々寒さで身体の芯まで冷えきっていたので、滝の近くまで歩く気力がなかった。さらに御宿までは冷たい雨が降り続き、「もうバイクには乗りたくない」と気分が落ち込んだ…。
 レインウェアを着込んでしまうとお店に入るのもおっくうになり、昼を食べるつもりだった農家レストランにも寄らず、南房総のホテルへ直行した。宿に着くと、すぐに温泉に入り、こわばっていた身体をゆっくりとほぐした。

 とても大きなホテルだったので、夕食時には、ずいぶん大勢のお客と一緒になった。中国人家族がいたのは、個人的に嬉しかった。尖閣諸島問題を機に中国人観光客が激減している中、わざわざ日本を選んで来ているわけだから、親日派といってもいいだろう。政治的な和解は容易ではないからこそ、民間交流は続けなければと思う。先週は天安門でウイグル族による爆破事件があり、数日後には山西省の共産党ビルでも爆破事件が続いた。関連性はないようだが、少なくとも政府に対する国民の不満が根っこにあるといわれている。貧しい者が貧しいままで、一部の富める者ばかりが益々富むようでは、社会は安定し得ない。みんな知っていることだが、不思議とどうにもならないものである。そういえば、先月、阪急阪神ホテルでの産地偽装表示問題に端を発して、あれよあれよという間に全国のホテル、百貨店で偽装の実態が明らかになった。一番目に付くのは、バナメイエビを「芝エビ」としている例だろうか。芝エビがそれほど貴重とは…。