Trip to Bali 2012

バリは、自然豊かな南の島というイメージとは、少し違う。旅、若しくは旅行へ行く目的は人それぞれだろうけど、僕の場合は、「人の生活」を見に行っているといってもいい。雄大な自然を見るのも嫌いではないが、より強く興味を抱くのは、その自然を生活の中に巧みに取り込み、独自の伝統や文化を継承・発展させながら、その地ならではのライフスタイルを形成している有り様である。故に無人島には興味が湧かないし、外国である必要もない。一歩、家を踏み出すと何かが違って見えてくる。その感覚こそが、旅なのである。
町中で見かけた水盤(上の写真)にもバリらしさが感じられて、思わず足を止めた。ヤシの葉やプルメリアの花は1年を通じて簡単に手に入る。ありふれた材料を巧みに加工し、アレンジすることでこんなにもキレイな飾り付けをして人々の目を愉しませてくれる。ささやかな日常の中に創られた豊かさに、小さな感動が生まれた。
バリ語には「芸術家」という言葉がないそうだ。生活や宗教の中に芸術があり、誰もが芸術家だからである。これと全く同じことを岡本太郎の本で読んだ覚えがある。いつものことで記憶が曖昧だが、芸術を特定の誰かが独占するのではなく、生きる人すべてが創造主にならなければいけない、というような主旨だったと思う。勿論、その中から特に優れたものを創る人も出てくるのだが、その芸術もその人だけのものではない色々なバックボーンがあってこそ創られるものなのだろう。
バリ絵画を初めて意識したのは、ブームの7thアルバム「TROPICALISM -0℃」(96)のジャケットだったと思う。アルバムの中身は必ずしもバリ音楽に傾倒したものではないのだが、ジャケットは、バリ島でも有名な画家、イ・クトゥッ・ソキ(I
Ketut Soki)によるものである。個人的にはあまり絵を鑑賞する趣味はないのだが、このバリ絵画には、惹かれるものがあった。元々はインドや中国からジャワを渡って伝わったものだそうである。そして、1930年代には統治下にあったオランダの画家らの指導により、バトゥアン・スタイルやウブド・スタイルの絵画が生まれた。そのモチーフとなるのは、バリ民話や日常生活、豊かな自然などである。気に入った絵があれば買うつもりでいたが、一目見て気に入った絵があったので買ってきた(下の写真)。ほぼ同じ絵がいくつかあったので版画なのかと思ったが、よくよく見比べてみると、人の表情や顔の向きが違っており、手描きであることがわかった。複写と手描きとでは、それが世界に1枚しかないという点において大きく違う。人間の価値もそれと似ている。
5 バリの美
photo:basin



