SCNE 9
 
 
 
 
「大学」
 
 3月5日、月曜日。朝一番で、サンタモニカの海へ行った。白い浜、青い海は、真夏のようだったが、景色に似合わず寒かったので、すぐに次の目的地へシボレーを走らせた。運転はKと交代でやっていたが、3日目くらいからようやく右車線にも慣れてきていた。はじめのうちは、直線はともかく、交差点を曲がった先で、一瞬、車線がわからなくなるので、いちいち頭の中で考えながら曲がる必要があった。また、ウィンカーとワイパーのレバーが日本車と逆の位置にあるので、これも慣れるまでたいへんだった。右折しようとしてワイパーを動かしたり、ウィンドーウォッシャー液を出したあとウインカーを点滅させたり…。本当に無意識に走れるようになったのは、もう帰国しようという頃だった。案の定、帰国してからは逆の間違いをして、ひとり苦笑いだった。
 Kの勧めで、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を訪ねた。3万2千人の学生を抱えるマンモス校だが、キャンパスは広々としていて、煉瓦造りの校舎と美しく植栽された緑が調和して、なんとも羨ましい気持ちになった。カフェテリアも充実していて、イタリアンやメキシカンなどいろんな国籍の料理店が並んでいて目移りするばかり。そのほか、ゲームセンターやボーリング場さえあるのには、本当に衝撃を受けた。日本の大学では、絶対に考えられないことだ。
 しかし、一番羨ましかったのは、施設の豪華さよりもその場の自由の空気だった。例えば、裸でジョギングする学生、ベンチで本を読んでいる学生、芝生で寝ている学生、恋人同士で語らっている学生、服装もジャージ姿からケバケバのドレススタイルまで全く自然に、多様なのだ。一目見て、個人の選択の自由が根付いているところだということがわかった。日本でも表面上、それほど自由の制約はない。ただ、個性を尊重したり、他人の眼を互いが気にしない、というような積極的自由もないため、みんな同じ様な顔をしてなければならない。個々人の本質は当然違うのに、同じフリだけしている日本という国が、ここにいると異常に思えた。