サンフランシスコ国際空港(SFO)でロサンゼルス行きの飛行機を待っていた。出発は予定より20分遅れの19時20分に変更されていたが、その時刻が近づいているのに、搭乗のアナウンスがなかった。手に汗がじわりと濡れてきた。
「もしかしたら、聞き逃してしまったのだろうか?」
緊迫してきた。搭乗ゲート数が多く、アナウンスも多いので、聞き逃した可能性は十分あった。でも、他の乗客が搭乗していた様子もなかったようだが…。
19時20分を過ぎたので、僕は意を決して乗り込むことにした。
74番ゲート。搭乗口にいた美しい黒人のスチュワーデスが僕を遮るように近づいてきて何か言った。「まだだ、まだだ」と説明しているようだが、はっきり理解できないので不安だった。とにかくこの便に乗らなければならないと言って懇願したら、諦めてニッコリ笑って通してくれた。
機内に通じる長いトンネルのような通路をくぐり抜けてみて、唖然とした。
誰もお客はいなかった。搭乗はまだということだ。入ってきた僕を見て、中にいたスチュワーデスたちが一斉に不思議な顔をした。困った顔をしている人もいた。たった一人不安になっていた自分が急に恥ずかしくなって、僕は隠れるように自分の席に身を沈めた。程なく、他の乗客も乗り込んできて、飛行機は大幅に遅れて、Kの待つロサンゼルスへと飛び立った。
Kはミズーリ州の大学で留学中だったが、今回は僕のためにアメリカ西海岸方面の案内役を買って出てくれた。この日、ロサンゼルス空港の到着ゲートで落ち合う約束をしていた。問題は、便の出発が50分以上も遅れたこと。さらに、到着ゲートが飛行中に変更されてしまったことだった。
ロサンゼルスは、すぐだった。果たして、到着したゲートにKの姿はなかった。「ゲート変更されたことを知らないのだろうか?」「約束したゲートの方で待っているのだろうか?」「僕がいないと知って、こっちに向かって来るだろうか?」「それとも僕が行くのを待つだろうか?」いろいろなケースが想定された。とにかく、30分動かず待つことにした。Kが現れなかったので、僕は動くことにした。同じ頃、Kも動き出したとは、このとき知るすべもない。世界有数の広さをもつLA空港では、ゲート間を移動するにもシャトルバスを使わないといけなかった。バス停までも遠く、すでに暗い周辺道路は、人もまばらで淋しかった。とてつもなく心細く、訳もなく怖かった。
かなり苦労しながらKのいるはずのゲートに辿り着いたが、そこにKの姿はなかった。こうなると、Kが空港に来ているのかさえ心配になってきた。仕方なくもう一度、元のゲートに戻ることにした。時刻も遅くなり、だんだんと焦りが強くなってきた。暗い空港内ではついに方向がわからなくなってしまい途方に暮れそうになっていたところを、親切な黒人のおじさんの案内で、ようやく元のゲートに戻ることができた。午後11時。そこで、ようやくKと会えた。久しぶりの再会だった。2時間近くも彷徨い続け、涙が出そうなくらい疲れきっていた。