15分、遅れた。15時10分、機体がゆっくりと動き出す。午後から降り出した雨も、飛行機の離陸に影響するほどではないだろう。
ターミナルを離れると滑走路までは割とゆっくり進み、滑走路に着くと一旦停止した。管制塔との最終確認でもしているのだろうか。しばらくして、ふたたび動き始めると今度はジェットエンジンの凄まじい推進力で、身体がシートに沈み込む。ずっと加速。機内もあちこちガタガタいってる。ひたすら加速。
その瞬間、ふわっと機体が浮かんだ。
「離陸成功ー!」心の中で歓声をあげる。
グレイの雲を突き抜けて、しばらくして平行飛行に移ると、「ポンッ」と音がしてシートベルト着用のランプが消えた。
「あのポンッの音がいいんだよな〜」と、また独り言。
飛行機は乗るのも眺めるのも好きだ。広々とした大空を飛ぶロマン、見たこともない遠い国へ行くエキゾチックな刺激に、興奮する。
ただし、好きといっても乗るのは今回で3回目。しかも、1回目はごく幼少の頃の微かな記憶しかなく、どこの空をいつ飛んだのか両親さえ覚えてない。
本当に乗ったのか疑わしい…。
僕の座った座席は左翼のすぐ横で、分厚い窓ガラスの向こう側から洩れてくるエンジン音は、ただならぬ騒々しさだった。隣の席には、同じツアーで来ているM君とK君がいた。M大学の学生で、僕と同じく「卒業旅行組」。
このツアーは、成田−サンフランシスコ間の往復チケットとアメリカ国内便の航空券5枚(1枚で1フライトできる外国人用航空券:1クーポン3千円と激安)、初日のホテル1泊がセットになって15万9千円。帰国日は、自由に設定できる。僕の帰国は3週間後、卒業式前日の予定だ。日本の25倍もあるアメリカを3週間で1周する夢の計画。ユナイテッドの翼に抱かれ、いざ太平洋を渡る。