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SCENE 19
「カート!」
太陽がやや西に傾き、島の浜辺が一段と美しく変化しはじめていた。近くの桟橋に行ったら、褐色の肌を西日にさらして、腕立て伏せをしている青年がいた。陽気なI君が声をかけたら、すぐに意気投合。彼の名は「カート」。日没の時、西側の浜に来て欲しいと言われた。ギターの弾き語りをやるのだそうだ。
浜に行くと、すでにたくさんの人で大にぎわいだった。火を噴く人、マジックをやる人、短剣を飲み込む人など、派手な大道芸人に人だかりができていた。美しいサンセット。少し外れた所に2、3人の小さな輪があった。カートだった。僕らも輪に入った。アコースティック・ギターと素朴なボーカル。リクエストに応えて、ビートルズやS&Gをやってくれた。
日が暮れてから、一緒にサンドイッチを食べに行った。カートは、底抜けに陽気な青年だった。服はガベージ(ゴミ箱)で拾ったと言うし、車(フォルクスワーゲン)も$100ちょっとで買ったという。NIKONの一眼レフも持っていて、これはメキシコで$100。人生を思いっきりエンジョイしている様子だ。しかし、一体何者なのか?正体不明のまま、会話が弾む!
サンドイッチを食べたら、「友達を招待したい」と言われるままに僕ら3人はカートのワーゲンに乗って友人宅を訪れた。友達はちゃんとした家に住んでいて、ポルトガル人のルーキスという名だった。ルーキスもやたらに陽気で、夜の突然の来客にもかかわらず、楽しそうにもてなしてくれた。ジン&トニックがとても美味しくて、少し酔ってしまった。ルーキスは、なぜかお琴の曲のカセットをもっていた。こんなところで邦楽を聴くなんて、本当に不思議な気分だった。言葉の壁を越えて、ずいぶん色々な話をした。カートのことも少しわかってきた。2ヶ月間ここにいて、あとはミシガン州にいるという。そこに彼女もいるらしい。
ルーキスに「マリファナやる?」と誘われた時は、さすがに慌てて断った。冗談だったのかなと、あとになって思ったけど…。
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