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SCENE 13
「旅の友」
3月9日、土曜日。ロサンゼルスに戻ってきた。
再び、ファーマーズ・マーケット。昼食には、またメキシカンを食べた。この1週間くらい、もういい!というくらいメキシカンを食べている。でも、美味しい。そして、再び、5日前に来た革ジャンの店に行った。店のおばさんが僕を覚えていて、「頑張って、買ってって!」と片言の日本語で今度こそ売ろうと必死になっている。僕はもう一度品定めをし、結局、AVIREXの茶色い革ジャン(G1)を買った。「一生の想い出だ!」と気合いを入れて…。余談だが、その年から数年間、日本では革ジャンが大流行し、街中どこでも革ジャンが歩き回っていたが、数年で下火になった。僕のAVIREXも同様、タンスの中で冬を越すことが多くなったが、40くらいになったらこれを着て、SR400みたいな渋いバイクに乗ってやろうと思っている。
夕方、サンタモニカに沈む夕陽を見に行き、その足でホテルに入った。Kとの旅も最後の晩を迎えた。テイクアウトした寿司を食べながら、9日間の出来事を思い出し、明日からのことを考えていた。
夜になってから、コーヒーを買いに外に出た。車窓から夜のロサンゼルスを眺めていると、夜の暗がりのアチコチに犯罪の臭いがした。たぶん、映画の見過ぎなんだろうけど、やはり不気味。とても車から降りてみる気になれなかった。
大学時代だけでKから何通のエアメールをもらっただろう。30か、50か。アメリカの時事ニュースから映画のトピック、宿舎での面白い出来事、買った車のこと(なぜか日本車)、ガールフレンドの話などなど、いつも僕を地球の向こう側に連れ出してくれた。そしてKは、最後に必ずこう書くことを忘れなかった。「今度の休みはこっちに来いよ!」
長年の夢がかなった。Kのお陰で、僕は生まれて初めて、異国の地を知った。明日からは、一人旅になる。旅の友はKに代わって「地球の歩き方」と旅先で出逢う人たちだけになる。不安より冒険心が勝り、夜明けが待ち遠しく思えた。
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