「君の名は。」
-your name.-
高校生男女の心が入れ替わる話。
大林亘彦監督の「転校生」(82)にもあった設定である。
さらにタイムリープもあるから、同監督の「時をかける少女」(83)のような要素もある。
差し当たり、特別な目新しさはないのだが、新海監督の最新作というところで期待値が上がる。
数年前に「秒速5センチメートル」(07)を見てから、気になる人ではあった。
このタイトルは、桜の花が落ちる速度からつけられたもので、
そういった詩的な味わいのある優しい雰囲気の作品であった。
絵の美しさが度々話題になるが、正直なところ、「秒速…」もその評判以上でも以下でもない。
何か少し、物語に物足りなさがあったのだが、「君の名は。」は、それを遥かに越えていた。
記録的な大ヒットとなり、いろいろな人が、新海監督の集大成と評しているが、そのとおりだろう。
ごく普通の高校生である立花瀧(神木隆之介)と宮水三葉(上白石萌音)のキャラがまずよい。
ごく普通といっても、魅力的な設定にはなっている。
そして、千年ぶりとなる彗星の接近が物語にエポックメイキングな刺激を与え、
そこから意外な展開へと向かっていき、正直、「こんな話か!」と驚いてしまった。
瀧が、入れ替わった三葉の胸を思わず揉んでニタニタしてしまうなどコミカルなシーンが多い前半から、
徐々にシリアス感が増し、観客の心をわしづかみしつつ感動のラストへと一気に導いていく。
物語そのものの面白さがあるからこそ、絵の美しさが強力な威力を発揮する。
「秒速…」でもそうであったが、今作でも舞台が都会(東京)と地方(糸守町という架空の町)で対比される。
さらに今作では、スマホを使った現代的なエッセンスと
組紐や口噛み酒に象徴される伝統文化がオーバラップされていく。
男女の入れ替わりに始まり、場所、時間軸、文化的背景などが、
非常にハッキリと対比されたり、入れ替わったり、融合したりする。
そこが、今作に広がりと奥深さを与え、メインターゲットの中高生だけでなく、
幅広い世代に受け入れられているのかもしれない。
個人的に一番、感銘を受けたのは、主役二人の声を演じた神木隆之介と上白石萌音である。
予告編ですでに二人の声に魅力を感じてはいたが、本編をみてさらに強いインパクトを受けた。
絵やスマホの文字で二人は時と空間を超えて交流を深めていくのだが、
その多くはモノローグによって、主人公の声が重ねられていたと思う。
声と文字、そして音楽と絵が見事に融合した傑作である。
今作はまだ上映が続いているが、興行収入は10月1日時点で130億円を突破し、
すでに邦画アニメ歴代5位となっている。
運命の人と巡り合う主人公は、自分探しをしていた若者だった。
どちらかといえば先の見えないもやもやした日々を送っていた若者がその人を知ってから、
一気に運命が拓け、まっしぐらに駆け出していく疾走感。
懸命に求め、必死に生きる、そんな確かな手ごたえのある生き方を誰もが探し、もがいている、
そんな時代ゆえのヒット作なのかもしれない…。
109シネマズ湘南
DATA
日本映画/2016年/107分/ビスタビジョン/
監督(新海誠)/原作・脚本・絵コンテ(新海誠)/
製作(市川南ほか)/音楽(RADWIMPS)/
声の出演(神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市川悦子)
KINGS MAN