「男たちの大和」
−YAMATO−
 
 
 
世界最大の戦艦大和は、昭和16年12月に完成。
その後、ほとんど活躍の場もないまま、昭和20年(1945)4月7日、
米軍の猛攻を受けて東シナ海に沈んだ。
その年の原爆投下を経て終戦を迎え、今年(2005)が戦後60周年の節目に当たる。
その当時、二十歳にも満たない青年等が戦争に駆り出され、
多くの者が家族や恋人と離散し、命を失い、生き残った人たちも高齢で他界している。
「先の戦争は、何だったのか?」
日本人が共有してきた記憶の中から戦争が消えつつある今、
断片的な情報や偏った価値観から語られれる歴史は、ときにフィクションになってしまう。
一体、60年前に何があったのか、その真の姿をできるだけリアルに再現しようとしたのが、
この「男たちの大和」である。
全長190mに及ぶ実寸大の大和が約6億円を投じて作られるなど、
かなりスケールの大きな作品に仕上がっている。
 
物語は、現在を起点に、過去にさかのぼり、未来へ希望を託す構成になっている。
すでに75才になる神尾克己(仲代達矢)は大和乗組員の生き残りで、
唯一、過去から現在までを知っている人物である。
その神尾とともに乗艦していた内田守(中村獅童)の養女内田真貴子(鈴木京香)と、
神尾の漁船で働いている15才の青年、前園敦(池松杜亮)が
過去の戦争を現在から未来へとつなぐ次世代の担い手として登場する。
この作品の主題は、「戦争を語り継ぐ」なのだと思う。
 
戦争を知らぬ世代からみれば、「なんで戦争なんかしたんだ?」「戦争はよくない!」と単純に思う。
正論であり間違ってもないが、しかし、当時の状況や人々の思いもよく知らずに、
結論だけいうことは、却って判で押したような違和感を覚える。
欧米がアジア圏の植民地化を広げていた状況や、
戦勝国主導で行われた東京裁判が国際法の見地からみると疑問の余地があることなど、
僕らがよく知らないことはたくさんある。
 
戦艦大和から生還した小林健さんの場合、「大和で死ねれば満足だ」と思っていたそうだ。
「当時は、国民の大部分が国のために死ぬことを当然と考えていた」という。
また、戦艦大和で高角砲発令所に配属されていた武藤武士さんは、砲撃を受けて浸水してきたとき、
「みんな靖国で会おう、と神棚の一升瓶をあけて別れの盃を交わした」と記している。
今の頭で考えればとても信じられない話だが、
60年前にこうした考え方があったのは事実なのである。
 
今作は、セットとCGを駆使してよりリアルな戦争描写を目指したという点では、
「プライベート・ライアン」的な作品である。
個人的には、こういう戦争映画はあまり好きではない。
戦闘場面をほとんど使わず、むしろ戦時下の人の心模様に主眼をおいた「鬼が来た!」(00)や
「ホタル」(01)、「父と暮せば」(04)などの方がより強い感動を受けるが、その辺は好みもあるだろう。
映画館には、戦争を知らない若い世代がたくさん来ていた。
長渕剛の主題歌「CLOSE YOUR EYES」もなかなか感動的だし、
今、改めて戦争を考えることにとても大きな意義があると思えた。
 
 
 
DATA
日本映画/2005年/監督・脚本(佐藤純)/製作(角川春樹)/製作総指揮(高岩淡、広瀬道貞)
/原作(辺見じゅん)/音楽(久石譲)/
出演(反町隆史、中村獅童、鈴木京香、仲代達矢、渡哲也、松山ケンイチ、蒼井優)