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「THE有頂天ホテル」
−THE WOW−CHOTEN HOTEL−
う〜ん、ここまでスゴイ映画はなかなか見たことがない!
まずタイトルが目に付くが、これは往年の名作「グランド・ホテル」(1933)と
フレッド・アステアの「有頂天時代」(1936)を合体させたもの。
ちなみに前者は、限られた場所に様々な登場人物がでてくる
「グランドホテル形式」の語源になったアメリカ映画である。
「THE有頂天ホテル」も「ホテルアヴァンティ」を舞台とした「グランドホテル形式」の作品だが、
しかし、主要な登場人物が25人(+動物1匹)もいて、それぞれがしっかりと繋がり合い、
誰もが際立った個性を発揮し、イキイキと描かれているのは本当に見事の一言に尽きる。
多くの映画には主役がいて、周りを脇役が固め、
見ている方は主役の視点で物語に入っていく場合が多いが、
この映画には、それがない!
主役は誰かといえば、ホテルの副支配人・新堂平吉(役所広司)なのだろう。
出番も多く、物語のはじめから終わりまで登場するが、
新堂が主役という感じはなく、むしろ、物語の「案内役」みたいな役柄である。
三谷監督の語るところによれば、蟻の巣を観察するキットのイメージで、
ホテル全体を蟻の巣のように俯瞰するような作品にしようと思ったそうである。
監督が云うところの「神の視点」というのも頷ける。
物語は、大晦日の夜10時から12時までの約2時間の話だが、
それを同じ約2時間の映画にしているというのもユニークである。
これは三谷監督が舞台でやってきた手法なのだそうだが、
映画でありながらお芝居を見ているような雰囲気も感じられて面白い。
冒頭の「謹賀信念」シーンから予想外のドタバタ喜劇の連続に笑いどおしだが、
ところどころにウィットとペーソスが散りばめられ、
一瞬たりとも気が抜けない文字通りのノンストップ・ムービーである。
ベルボーイの只野憲二(香取慎吾)がホテルを辞めるときに残していく「幸福になれる人形」が、
人づてにグルグル回って、やがて自分のもとへというエピソードは、
「情けは人のためならず」のような機知が感じられた。
いつも落ち着いている新堂が別れた妻(原田美枝子)の前では妙にぎこちなくて笑えたり、
そんな新堂の人となりをいつも側で見守り、
秘かに慕っているアシスタント・マネージャー矢部(戸田恵子)の人物像もとても魅力的だった。
いかにもいそうな品のない芸能プロ社長(唐沢寿明)の過剰な演技も本当に可笑しいし、
筆耕係のオダギリジョーには、相変わらず役の幅広さを感じさせられ、
こっそり愛人を作っている堀田衛(角野卓造)の間抜けな正直さも憎めず笑える。
汚職国会議員武藤田役の佐藤浩市は、シリアスな役柄を濃厚に演じ、さすがだなぁと引き込まれた。
その武藤田の秘書だった竹本ハナ(松たか子)が武藤を一喝するシーンは、なかなか感動的である。
「他人が何と言おうと、自分の生きたいように生きなさい!」というハナの言葉は、
この作品全体からも伝わってくるメッセージである。
この映画を言葉で説明しても、本当に意味がない。
とにかく面白くて、心が温まるいい映画だから、
「観ないと損だよ」としかいえないなぁ…。
ワーナー・マイカル・シネマズみなとみらい
DATA
日本映画/2006年/脚本と監督(三谷幸喜)/製作(亀山千広、島谷能成)/
音楽(本間勇輔)/美術(種田陽平)/キャスティング(空閑由美子)/
出演(役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、
YOU、オダギリジョー、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊藤四朗、西田敏行ほか多数)
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