「海街diary」
例によって、原作コミックが大人気なのだそうだ。
是枝監督といえば、カンヌである。
「誰も知らない」(04)で、柳楽優弥はカンヌ史上最年少の主演男優賞を受賞、
「そして父になる」(13)はカンヌ審査委員賞受賞。
そして、今作もコンペティション部門に正式出品され、受賞を期待されていた。
今回は未受賞とはいえ、エントリーできるだけでも栄誉なことである。
是枝作品、個人的にはあまり相性がよろしくない。
初めてみた「誰も知らない」は、親の違う4人の子供が保護者不在の生活を強いられる話で、
ネグレクトが社会問題になっている今日的テーマでもあり興味深かったが、あまりピンとこなかった。
次にみた「そして父になる」は出生時の取り違えに端を発する父と子の葛藤を描いた話で、
子供にとっての幸せって何だろうと考えさせられる内容だったが、激しい感動には至らない。
そして、今作は、親がいない3姉妹と異母妹が共同生活していく物語である。
3作品ともかなり極端なケースを扱っていて、ある種の衝撃はあるものの、
案外、想定内に物語が進み、物足りなさを感じてしまうのだが、
それは作品に対する自分の感度の低さ、もしくは好み、相性の問題だろうと思っている。
今作は、これら3作品の中では一番自分の好みに近かった。
何といっても、4姉妹を演ずる役者が魅力である。
長女幸が綾瀬はるか、次女佳乃に長澤まさみ、三女千佳が夏帆、そして、腹違いの妹すず役が広瀬すず。
現実にこんな姉妹がいたら、世間は放っておかないだろうなという顔ぶれである。
とりわけ注目なのは、広瀬すずであろう。
役名と同じ名前なのは偶然らしいが、「この子に出会ったことでこの映画は動いた」と監督も重要視している。
ややこしい境遇に育ち、「大人の事情」を独りで抱え込んで生きてきたすずを、
似たような苦しみを味わってきた3姉妹が引き取り、4人で乗り越えていく姿に誰もが応援したくなるだろう。
まあ、その辺がよくできすぎていて、ちょっと物足りなくもあるのだが…。
個人的に一番共感したのは、長女の幸。
天然キャラの綾瀬はるかが、親代わりとしての責任と呪縛を自然体で演じていて惹かれた。
「一緒に暮らさない?」と声をかけたのは幸だったが、
結果的にすずと一番深いところでわかり合い、そのことで自らの課題も乗り越えていけたのではないだろうか?
幸とすずが鎌倉の海に向かって叫ぶシーンは、なかなかよい。
「駆込み女と駆出し男」(05)、「あん」(05)に続き、今作にも樹木希林が出演している。
ほんのちょい役ではあるが、そのシーンだけ、特別な充実感が感じられた。
名女優が醸し出す空気感なのだろうか?
繊細に演じられる表情や台詞に込められた思いが伝わってくるからだろうか?
樹木希林の出番によって、この作品はかなり充足されたように思えた。
DATA
日本映画/2015年/126分/シネマスコープ/
監督・脚本・編集(是枝裕和)/原作(吉田秋生)/
製作(石原隆、都築伸一郎)/音楽(管野よう子)/撮影監督(瀧本幹也)/
出演(綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、大竹しのぶ、樹木希林、堤真一、風吹ジュン、リリー・フランキー)