「不都合な真実」
−an inconvenient truth−
 
 
氷河学者トンプソン博士は、南極の氷(氷床コア)に含まれる気泡を採取して、
なんと65万年前までの二酸化炭素濃度と気温を調査している。
それによれば、産業革命が始まるまでの65万年間で、
二酸化炭素濃度が300ppmを超えたことはただの一度もないそうだ。
さらに、その折れ線グラフの形をみると、二酸化炭素濃度と気温はほぼ相似形である。
二酸化炭素が増えれば、地表から宇宙へ出て行く赤外線の一部がつかまり、大気を温めるしくみだ。
ところが、この二酸化炭素濃度と温暖化の因果関係はかなり複雑で、証明はなかなか難しいようだ。
しかし、因果関係を証明するにも、時間はあまりない。
今のままのペースだと、あと45年で二酸化炭素濃度は600ppmを超えてしまう。
そのとき、地球はどうなってしまうのか?
 
ヘミングウェイの小説で有名な「キリマンジャロの雪」は、この30年間で激減し、
今では山頂の一部に残すだけとなっている。
寒いはずの北極では、氷盤が溶けて少なくなったために、シロクマが溺死するケースが相次いでいるという。
このままのペースで温暖化が進めば、50〜70年後には北極自体がなくなるかもしれないという。
北極の反対側でも状況は、似たり寄ったりだ。
グリーンランドや南極の氷の半分が溶ければ、世界の海水面は6m近く上昇し、
オランダやフロリダ、上海、カルカッタなど多くの都市が海底に沈み、
数千万規模の人が避難を余儀なくされるという。
 
この映画に出てくる映像やデータは非常に多く、ついていくのがちょっと大変なほどだった。
ナビゲーターは、アル・ゴア氏である。
元米国副大統領のゴア氏が、2000年の大統領選に出馬し、結果としてブッシュ氏に敗れ、
それ以降続けてきた地球温暖化に関する講演会が映画のベースになっている。
何度も何度も作り直したというスライドは、どれも見る者を釘付けにするものだし、
時折ジョークを交えた語り口は面白いうえに、とてもわかりやすい!
 
スライドの中に、1枚の地球の写真が出てきた。
1972年12月、アポロ17号が撮影したものである。
実は、地球の写真としてよく目にするものの99%は、この写真だという。
宇宙船の真後ろに太陽があって、地球の隅々までが丸々と輝いている唯一の写真なのだそうだ。
この写真をみると、確かに地球は美しいと実感する。
この青い地球を少しでも長く子孫たちに残したいというのが、ゴア氏の願いである。
それは、17年前に事故で息子を失いかけたときに誓った決意でもある。
個人的な自己の人生と、地球規模の大きな思いが1つにつながっていることって、
一人の人間の人生として、とてもすばらしいことだと思った。
映画では、さりげなくゴア氏の人柄に触れる。
ゴア氏を通じて、温暖化という大きな問題に近づいていける。
 
ゴア氏の講演では、非常に危機的な状況が畳みかけるように繰り返され、
否が応でも危機意識が芽生えてくる。
あまりにひどい状況に、もう手遅れではないかという気にもなってくるが、
そうではないというのが、ゴア氏のメッセージである。
まだ解決策はあるとして、映画の最後に「私にできる10の事」が紹介される。
「省エネルギー型の電化製品にすること」や「タイヤの空気圧をチェックする」とか、
「『不都合な真実』を友に勧めましょう」なんてのもある。
いきなり地球を冷ますなんてことは無理だが、
自分にできる小さなことでも意味がある、ということで、
取りあえず、この映画を友人や職場の人に紹介することにしよう!
 
 
 
シャンテ・シネ
   
DATA
米国映画/2006年/96分/監督(デイビス・グッゲンハイム)/
製作(ローリー・デイヴィッド、ローレンス・ベンダー、スコット・Z・バーンズ)/
製作総指揮(ジェフ・スコル、デイビス・グッゲンハイム、ダイアン・ワイアーマン、リッキー・ストラウス他)/
出演(アル・ゴア)