「エヴァとステファンとすてきな家族」
−Together−
 
 
 
邦題がいい!
レコードの「ジャケ買い」の感覚で、思わず映画館に行ってしまった。
しかし、見はじめてみると、想像していたのとは随分違って、妙な映画だった。
登場人物がみんなどこか変なのである。
それも大人が変で、子供はまともという設定。
子供が大人たちの世界をクールにみているという感じである。
地元スウェーデンでは3人に1人が見たという大ヒット作。
ちなみにスウェーデンの人口は、たったの900万人なのだが。
スウェーデンが誇るアバの70年代のヒット曲「S・O・S」がテーマ曲になっている。
なるほど、この映画の主題は、「S・O・S」なのかもしれない。
 
舞台は、1975年のストックホルム。
13歳のエヴァと10歳のステファンの姉弟は、夫婦喧嘩が原因で家を出ることになる。
母に連れられて行ったのが、叔父が住む「Together」という名のコミューンだった。
コミューンというのは、たくさんの人や家族が一緒に生活する住宅のことで、
いわば運命共同体のようなものである。
登場人物は、18人。
それぞれが問題を抱えて生きている。
ことここコミューンでは、コミュニズム、ホモセクシャル、レズビアン、フリーセックス、
菜食主義など各人の思想が入り交じり、日々珍騒動が巻き起こっている。
 
劇中ふと思い出したのが、フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の「過去のない男」だった。
コンテナに暮らす人々など奇妙な人物が多数出てくる映画だが、
ユーモアにあふれて不思議と悲壮感がなく、心底笑える作品だった。
雰囲気は似ているが、「エヴァと…」は、心底からは笑えない。
なぜなら、「過去のない男」の登場人物たちはみな、自分の数奇な境遇を受け入れて生きているが、
本作の登場人物らは現実を受け入れられずにコミューンに逃げ込んできている人たちなのである。
そこで「S・O・S」をしている人たちであり、僕は笑いつつも哀れだった。
 
自分らしく自然体で生きられない人たちの弱さ、強がり、奇怪さ、エゴなどは、
考えてみれば誰もが大なり小なりもっている性質で、
コミューンはこの社会の縮図といってもいい。
そのコミューンがドタバタ悲喜劇のあと、最後に迎えるラストシーンは、本当に素晴らしい。
このラストこそ、ムーディソン監督が今の社会に提示するささやかな希望なのだろうと思う。
エヴァの愛らしさとともに、忘れ得ぬラストシーンである。
 
 
 
DATA
スウェーデン映画/2000年/監督・脚本(ルーカス・ムーディソン)/
製作(ラーシュ・ヨンソン)/撮影(ウルフ・ブラントース)/音楽(モーテン・ホルム)/
出演(エンマ・サミュエルソン、サム・ケッセル)