「タイタニック」
−TITANIC−
 
 
 
「これは劇場で観るべき映画」というジェームズ・キャメロン監督の強い信念のもと、
不朽の名作「タイタニック」(97)が3D作品として15年ぶりにスクリーンに蘇った。
折しもタイタニック沈没後100年である。
「アバター」(09)で3D時代を拓いたキャメロン監督は、今作の2D/3D変換にも相当の研究開発を行い、
自ら全行程に関わって質の高い3D化を実現している。
また、ネガからのスキャン解像度を4K(HDの4倍)としたことで、
公開時よりも美しい仕上がりになっているそうだ。
別に3Dでなくともと個人的には思うが、「飛び出る」よりも「奥行き」を重視した3D化により、
巨大なタイタニックの臨場感は倍増し、
ローズ(ケイト・ウィンスレット)が身投げしようと舳先に立つシーンでは、
思わず立ちすくむほどの高低差が体感できる。
史上最多となるアカデミー賞11部門を受賞している本作の魅力は、
15年経っても全く色褪せることなく、文字通り不朽の名作であることが再認識される。
 
「不沈船」と呼ばれた当時世界最大となる豪華客船が処女航海(出航から3日半)で沈没。
史上最悪の海難事故を舞台に「ロミオとジュリエット」を再現するというアイデアから成る本作は、
映画2本分に迫る長い上映時間にも関わらず、一瞬たりとも飽きさせない。
キャメロン監督の強い美意識は、実物大に建造されたレプリカや船内の調度品、
衣装、言葉遣いなど隅々まで行き届いている。
学生時代、海洋生物学を専攻していた監督は「深海」への造詣も深く、
映画化のために5年ものリサーチを行い、
深さ3,773mに沈むタイタニック号の撮影にも成功している(劇中で使用)。
大幅な予算オーバーで、集客力のあるトップスターの起用を求めてきたスタジオ側の意向も突っぱね、
撮影時22、21歳だった2人の新星、ディカプリオとウィンスレットを映画史に残せたのは奇跡とも思える。
 
身分や境遇の違いを超えた恋愛というモチーフは、いつの世も人々の心を揺さぶるものだが、
キャメロン監督の脚本はさらに深く、人間のエゴや欺瞞、物質文明への警鐘などにも踏み込んでいる。
一等客船でのディナーに招かれたジャック(ディカプリオ)が出自の家柄を聞かれたとき、
「人生は、大切な贈り物。健康な身体、心…、必要なものはすべてある」と
目を輝かすシーンに監督の強い信念、価値観が伺える。
この爽やかな青年がやがて冷たい海に沈んでいくことを思うと、たまらなくなるのだが…。
そんなジャックよりも実は、ローズのリサーチを多く行ったと監督自身が語っている。
「自信がなく、パワーのない女性」として描かれたローズが、ジャックの存在によって
彼女本来の強さを取り戻し、人生を生きぬく力を得ていく物語。
それがキャメロン監督が作り上げた「タイタニック」のメインテーマなのであろう。
 
15年前に観たときにはそれほど意識しなかったが、
今回、102歳の老婦人となったローズ(グロリア・スチュアート)の回想という形で
この作品が作られていることに強く感動するものがあった。
(演じたグロリアさんは、2010年に100歳で亡くなったそうだ。生きてれば今年で102歳!)。
救命ボートからジャックの元に戻り死をも覚悟した女性がただひとり残され、生かされたこと。
男の勝手な願望かもしれないが、カゴの中に閉じ込められた「青い鳥」を外に解き放ち、
自由に飛び、美しく歌わせてあげたいという目的をもったジャックにとって、
彼女が生きぬくことがどうしても必要だったのだと思う。
誰にも打ち明けることなくその使命を全うしたローズが「紺碧のハート」を海に投げ入れ、
海底に沈みゆく先に眠るタイタニックでジャックに再会するエンディングは、
人生の深遠な意味を感じさせ、しみじみとした深い感動に導いてくれる。
 
エンドロールに流れる「My Heart Will Go On」(セリーヌ・ディオン)。
遭難者にアイルランドからの移民が多数いたことに着想したジェームズ・ホーナーが
アイリッシュ(ケルト)系の楽器で奏でる音楽は、亡くなった1500人もの人への鎮魂歌のようでもあり、
巨大な冨と鉄の塊よりも遙かに尊い人の命そのものを奏でているようだ。
 
 
TOHO海老名
 
DATA
アメリカ映画/2012年(3Dデジタル)/196分/監督・脚本(ジェームズ・キャメロン)/
製作(ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー)/音楽(ジェームズ・ホーナー)/
出演(レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼーン、キャシー・ベイツ、グロリア・スチュアート)/
字幕(戸田奈津子)