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「テルマエ・ロマエ」
−THERMAE ROMAE−
「すべての風呂はローマに通ず」
この映画の可笑しさは、この言葉に似ている。
一瞬尤もらしいが、ちょっと考えると意味不明なのがわかる。
が、その前にたぶん笑ってしまっているのだ。
舞台は古代ローマ、かと思いきや、大半は現代の日本。
基本的には荒唐無稽なコメディだが、時折混じる人情話にホロッとさせられた。
原作の方が遙かに面白いという意見をたくさん見聞きするが、
映画を初めて見る分には問題なく楽しめると思う。
この作品の一番の面白さは、古代ローマ人の目で現代日本をみるという着眼点にある。
公衆浴場ではなく、各家庭に風呂がある。
昭和30年代から普及したという内風呂もそれ以前はなかったわけで、
古代ローマ人がみたら「なんだ、これは!」となる。
「一体、どうやっているんだ?」と想像しているルシウス(阿部寛)の頭の中がことごとく面白い!
さらに進化したお風呂にはジャグジーが付いていて、
「沸騰しているのに熱くない」とルシウスが感嘆してしまうのも頷けるが、やはり笑える。
中でも、トイレのシーンはかなり可笑しかった。
ロール状になったパピルス(とルシウスは勘違い)に書かれた言葉は、
「きっと待ち時間の退屈しのぎに読むものなのだろう」と勘違い。
そしてウォッシュレットの新感覚に、思わずお花畑を空想し、涙してしまうシーンは、
お腹を抱えて笑ってしまった。
しかし、確かに近頃のトイレはすごいと思う。
自動で水が流れたり、前に立つだけで蓋が開いてくれたり、便座はいつも温かいし、
古代ローマ人ならずとも感心してしまう。
日本の温泉地は約3100あって世界一らしい。
第2位のイタリアが約300というから、圧倒的な数である。
内風呂が普及する一方、いわゆる銭湯は相当減ってしまっているのだが、
一方で日帰り温泉、スーパー銭湯などと形を変えて復活してきている。
ということは、単に日本人が風呂好きというだけでなく、
一種社交の場として公衆浴場の存在意義があるのかもしれない。
俗に「裸のつき合い」というが、一緒に風呂に入ることで得られる一体感というのが確かにある。
以前、知的障害のある子供たちの施設へ研修に行ったときのこと。
何を考えているのか、突如、意味不明な言動を発する彼らについつい恐怖を感じてしまったのだが、
一緒にお風呂に入る時間があって、恐る恐る彼らの身体を洗っているうちに、
す〜と恐怖心がしぼんで消えてしまったことがあった。
これは頭の中で考えてもなかなかできることではなく、
一緒にお風呂に入ることでできたことだったので、とても印象に残っている。
この映画も理屈で笑うというより、見たままを単純に面白がったら楽しめるという作品である。
阿部寛をはじめとする顔の濃い古代ローマ人と、
笹野高史ら平たい顔族という何もかもが対極的な民族交流のドタバタを大いに笑ってしまいましょう!
DATA
日本映画/2012年/108分/監督(武内英樹)/
製作(亀山千広ほか)/原作(ヤマザキマリ)/脚本(武藤将吾)/音楽(住友紀人)/
出演(阿部寛、上戸彩、市村正親、北村一輝、笹野高史)/
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