「007/スカイフォール」
−SKYFALL−
 
 
 
「007/ドクター・ノオ」(62)が公開されて(日本公開は翌63年)、
50周年目に当たるシリーズ第23作である。
6代目となるボンド役は前2作に続くダニエル・クレイグ。
酒と女性に弱い(強いとも云えるが)というキャラは健在だが、
より硬派でリアリティのあるボンドなのが個人的にはツボだ!
以前の007では、同じ監督が続投することも珍しくなかったが、最近は作品毎に変わっていて、
今作には、デビュー作「アメリカン・ビューティー」(99)でいきなりアカデミー監督賞、
作品賞など5部門を受賞したサム・メンデスが迎えられた。
ちなみにメンデス監督の奥さんは、「タイタニック」(97)のケイト・ウィンスレットだった(既に過去形)。
 
前作「007/慰めの報酬」(08)から約4年、この瞬間を待ち侘びていた人は少なくないだろう。
冒頭のプレタイトル・シークエンスから期待どおりの迫力あるアクション・シーンが切れ目なく続く。
トルコ市街地では家々の屋根の上をオフロード・バイクで爆走!
走る列車上での格闘シーンから高さ91mの鉄橋からの落下(SKYFALL)へとCGなしで一気に見せる。
オープニング・タイトルも凝りに凝っていて、一流映画ならではの風格にワクワクしまくりである。
個人的な話になるが、僕は推理小説よりはハードボイルド派。
コナン・ドイルよりもレイモンド・チャンドラーやダシール・ハメットの方を好んで読んでいた。
ハードボイルドの主人公たちは一様にタフで、ある意味で見栄を張る。
大抵が一匹狼で、協調性よりも自分なりの哲学、美学に基づいて行動する。
ダニエル・クレイグ版のボンドは、それと似た雰囲気がある。
 
今作では、MI-6の部長M(ジュディ・ランチ)とボンドの関係に焦点が当てられる。
ある意味でMは、非情である。
仕事に私情を挟まないのは強い使命感ゆえであるが、
その非情さを逆恨みした元諜報部員シルヴァ(ハビエル・バルデム)がボンドと敵対することになる。
シルヴァから見れば、ボンドは自分と同じ犠牲者にも映る。
「死と隣り合わせの仕事を平然と命じる」Mを憎みつつ、ボンドに対しては同胞意識もある。
シルヴァに揺さぶりをかけられるボンドのMへの忠誠心が試されるドラマは、
やがて、スコットランドの屋敷(SKYFALL)でクライマックスを迎える。
「私は1つだけ正しいことをした」
Mの言葉にボンドへの深い信頼が込められていて、じわじわと余韻が残った。
 
今作では、ボンドガールの出番がやや少ないのが残念だったが、
60年代の高級スポーツカー、アストン・マーティンDB5や最新式のワルサ−PPK/Sなど、
007ならではのアイコンも登場し、前作よりは楽しめた。
また、シルヴァの棲むマカオ沖の島に、
長崎の軍艦島(端島)が使われていたのはちょっとした見所である。
 
話は変わるが、今、NHK時代劇「薄桜記」を見ている。
主人公の丹下典膳(山本耕史)の生き様が格好良く、
千春(柴本幸)との行方も気になって見てしまうのだが、
武士道はどこかハードボイルド的でもある。
武士は食わねど高楊枝というように、見栄を張ってでも守り抜くものがある。
見栄というのは、人目を気にするがゆえの行動で、過ぎたれば意味がないと思っていたが、
より一層の都市化が進んだ現代社会では、もはや周囲の顔色を伺うこともせず、
四六時中自己の世界に没入し得る環境が整いつつあるようだ。
すぐ隣で起きている犯罪に気付く人がなく、
防犯カメラのみが目撃していたという事件が近頃多いのも、その証左のように思えなくもない。
どちらに振れようと、過ぎたるは及ばざるがごとしではあるが、
他者との関係性の中に己の使命を見出し、
それに対し極端に忠実に生きようとする無骨な主人公たちを見ていると、
生ぬるい生き方をしている日々に活を入れねばと感じてしまう…。
 
 
109シネマズ湘南
 
 
 
DATA
英国・米国映画/2012年/143分/スコープサイズ/
監督(サム・メンデス)/脚本(ニール・パーヴィス&ロバート・ウェイド、ジョン・ローガン)/
プロデューサー(マイケル・G・ウィルソン他)/音楽(トーマスニューマン)/
出演(ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ジュディ・ランチ)/
字幕(戸田奈津子)