「7つの贈り物」
−SEVEN POUNDS−
 
 
 
主人公ベン・トーマス(ウィル・スミス)が疲れ果てた表情で911にダイアルしている。
「どうしましたか?」と電話の向こう側の声に答えて、
「今から自殺者が出る…。それは、僕です…」
そう言って泣き崩れる主人公の様子は、一般に想像する自殺のシチュエーションと違い、
何かひっかかりを感じるものだった。
やむを得ぬ事情を抱えて死を選ぼうとしているとしても、
その様子のどこかから、生きよう、生きたいという生々しい生命力が感じられる。
そんな違和感を冒頭に抱えたまま、物語は動き始める。
 
ベンは、自分とあまり関わりのないような人を選んで、人助けをしようとしているように見える。
それは「7つの贈り物」というタイトルから勝手に類推してしまってもいるのだが、
それにしては、無断で病院に侵入したり、電話直販の販売員を罵倒したり、
良識的ではない行動も目につき、単純に人助けをするという美談でもなさそうである。
ベンがやっていることがいいことなのか、それとも裏のある犯罪なのか、
ある種、サスペンス映画のような雰囲気も醸し出していく。
 
ウィル・スミス扮するベンの表情もずっと不可解である。
人助けをしてホッと満足してるようでもあるが、
一方では、心の奥底に何かが重く沈んでいるような影を落としてもいる。
とにかくすっきりしない、よくわからないまま物語が進んでいく。
正直、「つまんない映画を見てしまったのかな…」と半ば思っていた。
 
最後の30分くらいだったろうか。
薄い霧のモヤモヤが晴れて一気に視界が開けるように、物語が展開した。
地下に封じ込められていたマグマがパッと噴出するように、
全面的に黒が支配するオセロの盤上がたった1駒で真っ白く反転するように、
全く不可解だった主人公ベンの内面に、一瞬にして観客が同化してしまった。
ベンがとってきた奇妙な行動、言動、表情、すべてが納得できた。
そして、冒頭に見ていたシーンに向かって、物語は一気に加速していく。
そうか、そうだったのか…。
裏にあった事情を知ってしまった観客は、ラストシーンを見るのがもはや耐え難くなっている。
ベンの苦悶に満ちた表情の意味を知って、心を強く揺さぶられる。
やるせなさというか、ある種の「未練」が残ってしまった。
 
アフリカの草原で草をはむ草食動物の家族がいて、
そこに肉食の猛獣が襲いかかる。
逃げまどう草食の家族の中には小さい子供たちがいて、
猛獣はそのうちの1頭に狙いを定めて追いかける。
巻き上がる土ぼこりが風に流れ、再び、静寂が戻ったとき、
猛獣の赤い口の下で柔らかな命が消えていくのが見える。
その様子を遠巻きに見守る生き残った家族らが、また、草をはむ。
 
この映画のラストシーンを思い出して、ふと、そんな情景が浮かんだ。
「生命」について、深く深く感じとることができる作品である。
 
 
 
DATA
米国映画/2008年/123分/監督(ガブリエレ・ムッチーノ)/
脚本(グラント・ニーポート)/音楽(アンジェロ・ミィリ)/
製作(トッド・ブラック、ジェームズ・ラスター、ジェイソン・ブルメンタル、スティーヴ・ティッシュ、ウィル・スミス)/
出演(ウィル・スミス、ロザリオ・ドーソン、ウディ・ハレルソン、バリー・ペッパー、マイケル・イーリー)