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「ルビー・スパークス」
−RUBY SPARKS−
主人公カルヴィン(ポール・ダノ)は若き天才作家でありながら、10年にも渡るスランプ中。
セラピストの助言に従い、夢の中に何度も現れる素敵な女の子を主人公に小説を書き始めると、
ある日、その女の子ルビー・スパークス(ゾーイ・カザン)が彼の家に現れる、というユニークな設定。
誰もが夢見るようなロマンチック・ファンタジーなのだろうと思いきや、
中盤からは意外にヘビーな展開になり、なかなか骨太な脚本だった。
ルビーに扮するゾーイ・カザンは、「欲望という名の電車」(51)や「エデンの東」(54)などを
撮ったエリア・カザン監督の孫に当たり、今作では主演、脚本、製作総指揮までこなしている。
笑顔がキュートなゾーイの体当たりの演技がとってもすばらしい!
理想の人と出会って恋に落ちたとき、人間はどうなってしまうのか?
実生活でもカップルのポールとゾーイは、リアルにエネルギッシュにその至福感を演じた。
そして、誰もが知っているように、その至福感は永遠には続かない。
自分の意のままにしたい、されたいという熱情は徐々に形を変え、
ままならない現実が前途に立ちはだかる。
この作品では、「彼女の創造主が彼」という設定なので、彼は意のままに彼女を操ることができてしまう。
それって、ある意味では究極の願望かもしれないが、
その映画的実験の結果は、女性ならではのリアリティがあって、
ちょっと怖いものがあり、教訓的でもあった。
カルヴィンに襲いかかる試練からエンディングにかけての展開は、
とても感動的ですばらしいものである。
「ままならない現実を前にして、人はどう生きたらいいのか?」
原発事故のあった福島でスローフード運動を続けている須藤陽子さんの新聞記事を少し前に読んだが、
「可能性があるなら、あがきたい」という彼女の言葉が、この映画にも通じるような気がする。
今作のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督は、
「リトル・ミス・サンシャイン」(06)で世界を熱狂させた夫婦である。
6年ぶりとなる今作でも、現実はそう甘くはなく、理想は水泡と化したかに見せる。
しかし、単なる失敗に終わるだけではなく、
続く道があるという未来志向のエンディングに見る者は救われるだろう。
何もかも自分の思い通りになったことがないからわからないが、
もし本当にそうなってしまったら、実はつまらないのかもしれない。
うまくいかない現実をも楽しみ進み続けることが、
意外にも一番よい道なのかもしれない。
渋谷シネクイント
DATA
米国映画/2012年/104分/ビスタ/PG-12
監督(ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス)/脚本(ゾーイ・カザン)/
製作(アルバート・バーガー、ロン・イェルザ)/音楽(ニック・ウラタ)/
出演(ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アントニオ・バンデラス、アネット・ベニング)/
字幕(栗原とみこ)
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