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「庭から昇ったロケット雲」
−The Astronaut Farmer−
大学で航空宇宙工学を学び、空軍に入隊後NASAでの訓練も受けた主人公
チャーリー・ファーマー(ビリー・ボブ・ソーントン)は、
父親の急死により、牧場経営の後を継ぐことになった。
それでも彼は、宇宙への夢を捨てきれず、ロケットを自作するために多額の借金を抱え、
町の人には変わり者扱いされ、そのうえロケットが大陸間弾道ミサイルを基に設計されていることから、
FBIやCIAからも計画阻止の手が伸びてくる始末。
しかし、ビリー・ボブ・ソーントン扮するファーマーはなかなか折れない、信念の男である。
「子供のころ何でも好きなものになれると教わった。
愚かかもしれないが今でも信じている。心の底から。」という台詞がグッときた。
この映画に通底しているのは、この言葉に集約されていると思える。
どんなに困難でもあきらめなければ、いつか夢は叶うというメッセージ。
監督、プロデューサー、脚本は、今作がメジャーデビューになる双子のポーリッシュ兄弟。
自らの映画製作の苦労体験をロケットづくりに置き換えて脚本を練っていったそうである。
だから、ファンタジーであっても、リアリティがあるのに違いない。
ファーマーが授業中の学校に来て、息子のシェパード(マックス・シエリオット)を連れ帰るシーンがある。
驚いた歴史の先生が制止しようとすると、ファーマーはいう。
「歴史は習うより、作るものだ」。
もう一つ、とても印象に残る台詞があった。
ファーマーの父親の話だ。
彼の父は牧場をこよなく愛していたが、経営に行き詰まり、手放さなければならなくなった。
そして彼の父は、牧場を手放す前に自らの命を絶ってしまったのだった。
父親の頭を打ち抜いた弾丸は、今も宙を飛び続け、そしてファーマー自身の夢に向かってきているという。
ファーマーがこだわっているのは、実はロケットではなく、父の死なのかもしれない。
自分が父のように夢をあきらめてしまったら、息子はどうなるのか?
そして、次のような台詞をいう。
「息子は小さい頃、父親に憧れる。そして、10代になると嫌うようになるが、
20代になると、父親に似てくるのだよ。」
自分にも同じような思いがある。
だから、簡単に諦めるわけにはいかない。
原題よりも邦題「庭から昇ったロケット雲」がいい。
舞台となる牧場は、昔から数多くの映画が撮られたというニューメキシコ州サンタフェ郊外にセットされたそうだ。
実にのどかな平原に伸びていくロケット雲がとても美しかった。
そして、宇宙からみた青い地球、ファーマーの日焼けした笑顔が清々しい感動を運んでくれた。
映画のラスト、TV番組の公開録画にファーマーが出演している。
キャスターの質問に答えるファーマーに観客席から大きな歓声が湧く。
その中に、ずっとファーマーを監視していたFBIの二人組の姿もあった。
おそらく上司の命令で監視に来てるのだろう。
拍手喝采が湧くなかで、思わず一緒に拍手してしまうFBIの姿がちらっと映る。
法律や常識や正義や理屈、そういった頭で考えたこと以上に人は、
心で生きているものなのだ、ということを感じさせるワンシーンだった。
製作・脚本のマーク・ポーリッシュの言葉。
「ぼくが観て強い影響を受けた多くの映画は、映画を観た後
『もっといい人間になりたい』と思わせてくれる作品なんだ。
だから、この映画を観て『ここにぼくが夢見ていながら、
まだやっていないことがある。もう一度考え直してみよう』と思ってもらえればうれしいよ。」
作り手の気持ちは、見た者にも伝染するらしい。
見終えたとき、自分もロケットを飛ばせるって気分になっていた。
新宿シネマート
DATA
米国映画/2007年/104分/監督(マイケル・ポーリッシュ)/
脚本(マーク・ポーリッシュ&マイケル・ポーリッシュ)/
製作(マーク・ポーリッシュ、ポーラ・ワインスタイン、レン・アマト、マイケル・ポーリッシュ)/
音楽(スチュアート・マシューマン)/
出演(ビリー・ボブ・ソーントン、ヴァージニア・アドセン、ブルース・ダーン、ブルース・ウィリス)
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