「恋愛小説家」
−AS GOOD AS IT GETS−
 
 
第70回(1998年)米アカデミーは「タイタニック」旋風が席巻した年であったが、
そんな中で主演男優賞と主演女優賞をダブル受賞したのが「恋愛小説家」だった。
監督・脚本は、ジェームズ・L・ブルックス。
アカデミー作品賞、監督賞などを受賞した「愛と追憶の日々」の監督・脚本家である。
「愛と追憶の日々」では、母と娘の擦れ違いと葛藤を描き、深い絆と愛を謳いあげて大きな感動を呼んだが、
今回も脚本が冴えまくり、コミカルな人間模様と揺れ動く心理描写が絶妙で、
思わずクスクス笑ってしまう内容である。
 
極端な偏屈ぶりを発揮する恋愛小説家を演じるのはジャック・ニコルソン。
この人物設定が超ユニークで、その毒舌ぶりも実に可笑しい。
なんてことない平凡な生活が少しずつ変化していく過程も面白く、
知らず知らずのうちに引き込まれてしまう。
もう一人の主役、レストランのウェイトレス役でヘレン・ハントが登場する。
子持ちのウェイトレス役だが、ちょっとした仕草や表情がとてもキュートで、不思議な艶っぽさに参ってしまった。
 
この映画のテーマも、やはり「擦れ違い」だろうか。
CHICAGOの歌ではないが、人はなかなか素直になれなくてお互いに困り合っている。
見栄っ張りだし、怖がりだし、強がりもするし、我が儘でもある。
とにかく素直になるのは難しく、擦れ違いの日々である。
ところが、たぶん心のどこかでは何が大切かがわかっていて、
だからこそ葛藤があり、悩みがあるのに違いない。
「いい人になろうと思って」というJ・ニコルソンの台詞がなかなかいい。
「あ〜あ」と何度もため息が出る映画だが、見終わった後は、爽やかな心地よさが残る。
 
 
 
DATA
アメリカ映画/1997年/製作・監督・脚本(ジェームズ・L・ブルックス)/
主演(ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント、グレッグ・キニア)/音楽(ハンス・ジマー)