「羅生門」
 
 
 
その生涯で30本の映画を撮り、いくつもの名作を残した黒澤明。
11本目の「羅生門」で黒澤の名は一躍国際舞台へ駆け上がり、
世界では全く無名だった日本映画をも有名にした作品である。
ヴェネチア国際映画祭グランプリ、米アカデミー最優秀外国語映画賞ときわめて高い評価を受けた海外と比べ、
国内の評価はそれほどでもなかったようだ。
「難解である」というのがその理由だが、それはそれで味わい深く、面白い。
 
この映画は、映像といい、シーンの運び方といい、派手な音楽といい、
どこを切っても映画の金太郎飴で、冒頭から最後までワクワクしどうしである。
誰が主役だかわからない話で、少ない登場人物がそれぞれ色々な顔を見せるという趣向もユニーク。
三船敏郎をはじめ黒澤映画お馴染みの面々が、魂の入った実に見事な演技をする。
しかも、アッと驚く仕掛けが随所にあって、物語の展開には全く目が離せない。
 
人間には、煩悩がある。
例外なんてない。
中には善良な人が正しく生きようと、悩んでいる。
それでも煩悩は捨てきれず、決して消え去ることはない。
ひとり残らず煩悩をもって生きている現実を見せつけて、この映画はクライマックスを迎える。
さんざんな人間が、これからどうやって生きていくのか?
この映画のラストに、黒澤監督の「人間愛」が感じられた。
 
 
DATA
日本/1950年/監督(黒澤明)/脚本(黒澤明・橋本忍)/原作(芥川龍之介「藪の中」)
音楽(早坂文雄)/撮影(宮川一夫)
出演(三船敏郎・京マチ子・志村喬・森雅之・千秋実)