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「エディット・ピアフ 愛の賛歌」
−LA VIE EN ROSE−
エディット・ピアフの名前は全く知らなかったが、母国フランスでは、国民的スターである。
この映画が公開されたフランスでは、8週で500万人の動員、実に10人に1人がみたという。
タイトルにもある「愛の賛歌」をはじめ、「バラ色の人生」「水に流して」など、
曲名は知らなくとも、聞けば誰もが知ってる名曲ぞろいである。
また、彼女は、歌うだけでなく、多くの歌の作詞もしたそうだ。
名曲が生まれた背景には彼女の悲しい人生があったことを、
オリヴィエ監督は、ピアフの名曲の数々とともに力強く描き出している。
原題は「バラ色の人生」だが、それにしてはあまりにも壮絶な人生に、
ただただ圧倒されてしまった。
映画は、晩年のエディット・ピアフ(マリオン・コティヤール)が舞台で倒れるシーンから始まる。
彼女は、第一次世界大戦の最中、1915年のパリ・ベルヴィル地区に生まれる。
父は戦争に行って不在、母は路上で歌を歌って日銭を稼ぐという貧しい家である。
幼いピアフは母に見捨てられると、母方の祖母にあずけられたり、
父方の祖母ルイーズ(カトリーヌ・アレグレ)が経営する娼館にあずけられたりする。
元々の虚弱体質と栄養失調で失明してしまうが、教会で聖テレーズに祈って治癒したことから、
ピアフは生涯、聖テレーズのクロスをつけて歌うようになる。
15のとき、大道芸人だった父とともに路上で歌うようになったピアフは、
天性の才能が認められて、キャバレークラブで歌うようになり、
やがてレコード・デビュー、スクリーン・デビューと名声を手にしていくのだが、
晩年は酒や薬物に溺れ、心身を崩壊させ、47年という短さで生涯を閉じることになる。
晩年のピアフがインタビュアーに答えるシーンがある。
その1つの質問「死を恐れますか?」への答えは、
「孤独よりマシね」だった。
この言葉はとても印象的で、この作品のテーマのようにも思えた。
ピアフの生涯は、いつも孤独と隣り合わせの人生だったように思える。
愛への渇望が歌うことへの原動力にもなっていたようにも思えるが、
それでも消えぬ孤独への恐怖心が、酒や薬物への依存を高めていったようにもみえた。
そんな中、プロボクサー、マルセル・セルダン(ジャン=ピエール・マルタンス)との恋は、
彼女を幸せの絶頂へと導いたのち、奈落の底へと突き落としてしまう。
人生はなんと残酷なのだろうと、それが事実であるだけに震える思いがした。
しかし、彼女はその後も歌い続け、そして、シャルル・デュモン作曲、ヴォーケール作詞の「水に流して」で、
「私は後悔していない」と歌う。
これがラストシーンにもなるのだが、思わず拍手したい気持ちになった。
人は結局、基本的には孤独なんだと思った。
だから人を愛したり、愛する人と一緒に生きていくのだろう。
それでも人生から完全に孤独を捨て去ることはできないのかもしれない。
そんなときは、歌を歌って、生きていくのだろう。
エディット・ピアフ本人が幸せだったのか、わからない。
でも、彼女は精一杯生きることで、後悔のない人生を生きたのだと思う。
DATA
フランス・チェコ・イギリス映画/2007年/140分/監督・脚本(オリヴィエ・ダアン)/
製作(アラン・ゴールドマン)/音楽監督(エドワール・デュボワ)/
出演(マリオン・コティヤール、シルヴィ・テステュー、パスカル・グレゴリー、ジャン=ピエール・マルタンス)
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