「ぼくは怖くない」
−IO NON HO PAURA−
 
 
 
1978年、舞台は、南イタリア・プーリア州という田舎町。
スクリーンいっぱいに広がる黄金色の麦畑の中を子供たちが駆けてゆく。
限りなく牧歌的で美しいシーンから、物語は幕を開ける。
 
「ほのぼのした話なのかな〜」と思っていると、たちまちサスペンスに変貌する!
そしてまた次のシーンでは、ハリネズミやらヒキガエルが登場し、にわかに和む。
こうした「コントラスト」のメリハリがとてもよく効いていて、
心地よさとスリルを交互に味わっているうちに、
作品のテーマが浮かび上がってくるという仕掛けである。
光と闇、強い者と弱い者、大人と子供…。
こうした「コントラスト」で構成されたこの世界を、
10才の少年ミケーレの目で眺めていく。
そのとき必要なものは、何であろう?
それは、「勇気」である。
「勇気」がこの作品の主題なのだろうと思った。
 
「ぼくは怖くない」というタイトルだが、本当は「怖い」のである。
だだっ広い麦畑に突如現れた薄暗い「穴」。
誰もが子供時代に体感した未知の世界への好奇心と恐怖心を象徴しているのが「穴」である。
主人公ミケーレ少年は、勇気を出して「穴」へと入ってゆく。
穴の中から見えてきたのは、とんでもない「大人の世界」だった…。
 
見終えて、思った。
人はいろいろなことを経験して大人になっていくけれど、
その間に、失ってしまうものもいろいろあって、
その1つは「勇気」なんじゃないかと。
子供は怖さをしらないから勇敢なのかもしれないけれど、
大人は世の中の怖さやカラクリや矛盾やらを知り、
さらに自尊心やら要領やらを身につけるうちに、
勇気の出し方を忘れてしまったのではないかと。
しかし、勇気というのは、大人にも必要なはずである。
「勇気」の出し方をこの映画は教えてくれる。
 
ミケーレ少年とフィリッポ少年の友情と勇気には、思わず心が熱くなる。
クライマックスの二人の笑顔が網膜に焼き付いて離れない。
拍手喝采!イタリアならではの素晴らしい映画である。
 
 
 
DATA
イタリア映画/2003年/監督(ガブリエーレ・サルヴァトーレス)/原作(ニコロ・アンマニーティ)/
脚本(ニコロ・アンマニーティ、フランチェスカ・マルチャーノ)/音楽(エツィオ・ボッソ)/
出演(ジュゼッペ・クリスティアーノ、マッティーア・ディ・ピエッロ)/