「パディントン」
-PADDINGTON-
CGがとてもよくできていて、ぬいぐるみのような小熊が動画になると「本物」に見える!
黒目の隅っこにちょっとだけ白目がのぞくところなんて、わが家で飼ってる犬とそっくりで、
親しみと愛着をいっぱい感じながら見た。
原作が初めて発行されたのは、1958年。
以来、150タイトルものシリーズになっていて、全世界で3500万部の売り上げらしい。
原作者のマイケル・ボンドさんもご健在で(80歳)、今作も鑑賞して楽しまれたとのこと。
こんな素敵な映画になって、作家冥利に尽きるとはこのことだろう。
基本的には子供向けなのだろうけど、
上橋菜穂子さんの著作がそうであるように、優れた児童文学は、
大人、子供という区別なく楽しめるものであり、大人だからこそ感じる部分もある。
舞台はペルー、とある探検家が森深くに入っていく冒頭は記録映画風に描かれていて、一瞬で引き込まれた。
映像表現が凝っていて随所に遊び心があり(壁に描かれた樹木が家族の状況に合わせて変化するところなんて秀逸)、
要所要所で街角の生バンドがシーンに合った音楽を演奏するのもユニーク。
脚本が実によく練られており、縦横無尽に張り巡らされた伏線がごく自然な形で回収されて、
見ていて腑に落ちる展開が最後まで手抜かりなく続く。
テディベアやくまのプーさんなど、熊という動物はなぜか人気がある。
丸い顔とぽっちゃり体型がおっとりした安心感を醸し出すからだろうか。
パディントンもとても愛らしく、愛さずにはいられない存在である。
そして彼の不幸な生い立ちや身寄りのない都会へ上京して生きていこうとする健気さが胸を打つ。
パディントンを1日だけの約束で受け入れるブラウン一家もなかなかよい。
特に、リスク管理を仕事にしているブラウン氏(ヒュー・ボネヴィル)が魅力的だ。
熊を家に泊めることでどれだけリスクが高まるかしっかり数字を示し、
その予測どおり、いろいろな損害が発生してしまうわけだが、
その彼が家族のため、熊のために変化していく様が見所である。
昔はワイルドだったという設定に笑い、クライマックスの勇姿には涙を禁じ得ない。
そうそう、訳ありの悪役を演じるニコール・キッドマンの小悪魔的なキャラも魅力的だった。
映画を見終えたとき、誰もが幸福感で満たされるに違いない。
ふと頭の隅で思ったのは、今、世界各地で内戦或いはテロなどで武器を手にしている者達に、
95分間だけ休みを取って、この映画を見てもらえたら、ということだった。
過酷な精神状態で喪失してしまった平常心を取り戻せたら、きっと、何かが変わるような気がするのだが…。
今作の主人公パディントンは、遠いペルーの森から来た移民熊である。
ロンドンの人にとってみれば、全く縁もゆかりもない他者であり、
何の取り柄もなく、金銭的価値も生み出さない厄介者なのである。
そんな他者を受け入れるブラウン一家の物語を見ていると、
世界を幾つにも分断してしまう宗教や人種や国籍や文化や貧富の差…、
それらの壁を乗り越えて共存の道を探せるような気がしていくるのである。
小さな子供たちが見て楽しめる作品でありながら、
深遠なテーマも内包した、とても優しさのある感動的な100点満点の作品である。
DATA
英国映画/2014年/95分/スコープサイズ/5.1ch/
監督・脚本(ポール・キング)/製作総指揮(ロージー・アリソン他)/
原作(マイケル・ボンド)/音楽(ニック・ウラタ)/
出演(ベン・ウィショー、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ニコール・キッドマン)/
吹き替え(松坂桃李、木村佳乃、古田新太、斉藤由貴、三戸なつめ)/
字幕(岸田恵子)
KINGS MAN