「パッチギ!」
 
 
 
この映画は、1つの歌がモチーフになって生まれた。
それが「イムジン河」。
朝鮮半島南北分断の悲しみを歌った歌(詞:朴世永/作曲:高宗漢)が、
日本では松山猛の訳詞によりザ・フォーク・クルセイダーズによってレコーディングされた。
ところが直前になって、発売中止になってしまう。
その年、1968年の京都がこの映画の舞台である。
 
とにかく、喧嘩盛りだくさんの映画である。
それはカンフー映画とも違うし、マトリックスとも違うし、日本ならではの独特の雰囲気に包まれる。
ちなみに「パッチギ」とは、「突き破る、乗り越える」「頭突」の意味をもつハングル語。
喧嘩のシーンではこれでもかというくらい頭突のシーンが出てくるが、
これがもう強烈に痛そうなのだ。
もう喧嘩はやめようよ!と観ている方は思うのだが、明けても暮れても喧嘩が続く映画である。
 
そこに、爽やかなドラマが生まれる。
それが主人公のふたり、松山康介(塩谷瞬)とリ・キョンジャ(沢尻エリカ)のロマンス。
合奏部に所属するキョンジャがフルートで奏でる「イムジン河」。
その音色に誘われて鴨川を渡ってくるのが、康介。
このキョンジャが本当に可愛くて、だからこそ康介が必死になってハングル語を覚えたり、
ギターを練習して「イムジン河」を歌えるようになるのがわかるのだ。
 
折しも今、島根県の竹島問題や靖国参拝問題、教科書問題、北朝鮮の拉致問題といくつもの問題が山積している、
その今だからこそ、この作品が作られた意味は大きい。
「世界は、愛で変えられる」というのがこの映画のメインテーマになっているが、
そんなに簡単ではないには違いない。
でも、井筒監督は語っている。
「今の日本って自分の物語ばっかりやないですか。でも、僕らは、対岸にいるヤツの話を聞きたい。
…最初から渡ることを諦めてしまったら人間というのは進化しない。」
そうだなと思う。勇気がいるなとも思う。
 
フォークルの「イムジン河」が発売中止になった理由。
それは、作者クレジットがないことと日本語訳詞が原曲に忠実でないという抗議を受けたからだった。
それが34年を経た2002年になってようやくオリジナル版で発売されたのだ。
映画のクライマックスで康介が歌う「イムジン河」のなんと感動的なこと。
そして、ラストシーンで康介がキョンジャに告白する台詞の面白いこと。
見終わったとき、本当に清々しい気持ちになれる、そんな映画だった。
 
 
 
DATA
日本映画/2005年/監督・共同脚本(井筒和幸)/脚本(羽原大介)/原案(松山猛)/
音楽(加藤和彦)/出演(塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、オダギリジョー、大友康平、前田吟)
     
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