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「鬼が来た!」
−鬼子来了−
戦争下における人間性をテーマに、いつか映画を撮りたかったと、
監督、脚本、主演のチアン・ウェイは、インタビューで語っている。
自分も今、こういう「戦争映画」が見たかった。
昨年、2001年9月11日の米国同時多発テロ、その後の報復という名の米軍アフガン侵攻、
さらに連鎖的に火がついたイスラエルのパレスチナ侵略。
ニュースを通じて戦争の"断片"を見るが、どうにも腑に落ちない。
罪もない人々が血を流し、子供の顔が爆撃で歪み、家族をも失う。
「これは一体、どういうことか?」
「人間は、かくも愚かなものか?」
「これは昔話ではない。この瞬間にも起こっている戦争を、どう認識すればいいのか?」
「鬼が来た!」は、チアン・ウェンという稀代の天才によって、
戦争と人間の本質を見事に表現しきった映画である。
2000年のカンヌ映画祭ではグランプリを受賞し、国境を越え、多くの人々に支持された。
一方、本国(中国)では、未だに公開されていないという。
国としては認められない表現があるというのだが・・・。
戦争という悲惨な殺戮行為を、なぜ人間たちは繰り返し起こしてしまうのか?
チアン・ウェンは、このように言っている。
「人間というのは、疑ってかからなきゃならない存在なのではないか。
私達が信じているほど頼りになる存在ではない。」
中国人の捕虜になる日本兵を演じた香川照之は、まさに極限状態となった撮影を振り返りつつ、
「戦時下のような状況では、人はいくらでも狂える」
と実感を込めて語っている。
この「戦争映画」には、それほど残酷な戦闘シーンは出てこない。
描かれるのはもっぱら、戦時下の人間心理ばかりである。
それはときに滑稽でコミカルであり、声をあげて笑ってしまう場面がいくつもある。
モノクロの重厚なカメラワーク、人間心理に迫る演出は、黒沢明の「羅生門」を彷彿とさせるものを感じた。
1つのキーワードは、「疑心暗鬼」である。
すべての人の心のどこかに、その「鬼」が潜んでいるのである。
それがあるとき、パッと表出する。
このように真実を語れる人がいることに、その良識とその良心に、励まされる映画である。
すべての人に、勧めたい映画である。
DATA
中国映画/2000年/監督(姜文<チアン・ウェン>)/
脚本(姜文、尤風偉<ユウ・フォンウェイ>、史建全<シー・チェンチュアン>、述平<シュー・ピン>)/
撮影(顧長衛<クー・チャンウェイ>)
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