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「ノー・マンズ・ランド」
−NO MAN’S LAND−
戦争の結末は、誰もが知っている。
”LOVE&PEACE”は、誰もが口ずさむ合い言葉である。
それでも、戦争は繰り返される。
わかっていても止められない戦争。
矛盾だらけの人間が飽くことなく続けている悪戯。
「反戦映画を作りたかった」というボスニアの新鋭、ダニス監督(当時33歳)は、
反戦映画の難しさを次のように語っている。
「論証的な映画を作っていたら、カンヌには呼ばれることはなかった」
こういう気分は、普段の生活の中でもたびたび味わうものである。
理屈通り、理論通りいかないことは多く、論証が無意味に終わることも甚だ多い。
日本サッカーを決勝Tに導いたトルシエ監督も言っていた。
「サッカーとは、論理的にいかないものだ」
なぜ、戦争するのか?なぜ、人を殺すのか?
突き詰めれば、それは「自己防衛本能」という気がする。
身の安全が保証され、日々安心していて、満たされていれば、この本能は大人しい。
ところがある日、あるところで、自分の身を傷付けられたり、身の危険を感じると、
たちまち目を覚まし、理性や忍耐や規制が効かなければ大暴れする。
この映画は、今まさに世界中で起こっている諸々の暴力について、
適当なバランスとユーモアセンスをもって描かれている。
タイトルの「ノー・マンズ・ランド」とは、91〜95年に起こったボスニア紛争で、
セルビア軍とボスニア軍に挟まれた「中間地帯」を意味するのだが、
ここの塹壕にボスニア兵(チキ)とセルビア兵(ニノ)が取り残されるという場面設定がユニーク。
考えてもみないようなところから物語が始まり、予想もし得ない方向へ話が進んでゆく。
前半は、ユーモアたっぷりのエピソードに笑える場面も多いが、ラストは痛烈である。
実際にボスニア紛争に従軍したダニス監督は、ボスニアで起きた本当のことを知って欲しくて、
脚本を書いたという。
世の中にはどうしようもないことが多いが、同世代の人間がこうした矛盾と対峙し、
前向きなメッセージを発信していることにもうれしさを感じた。
2001年カンヌ国際映画祭 脚本賞
2002年 アカデミー賞 外国語映画賞
DATA
中フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロヴェニア映画/2001年/
監督・脚本・音楽(ダニス・タノヴィッチ)/
出演(ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ)
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