「誰も知らない」
−Nobody Knows−
 
 
 
素直に感動できない映画だった…。
だから、ずっとその理由を考えている。
 
今年2004年5月のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、
主演の柳楽くんがカンヌ史上最年少の最優秀男優賞を受賞するなど高い評価を得た。
その興奮冷めやらぬ7月、いよいよ日本で公開されるや、
満員で見られない状況が続いた(上映館がシネカノンだけだったというのもあるが)。
で、10月になって満を持して見たわけだが、冒頭から私は無性に腹立ち、苛立ち、最後までしっくりこなかった。
 
1つの原因は、母親けい子(YOU)である。
けい子は、いかにも酷い母親というわけではない。
母親らしい面も見せつつ、結局は子供たちを騙してゆく生き方は、
何となく「ママゴト」か動物の「飼育」をしているように見えた。
自分で産んだ子供でありながら、近所の子供に対するような不思議な距離感で接し、
子供らは無邪気に喜びながら、どこかで母親に見捨てられていることを知っている奇妙な関係。
子供たちの不安を見て見ぬフリして、自分の幸せ探しに出かけてゆく母親。
眠っている母親の目から涙がこぼれるのを、明(柳楽優弥)が見るシーンがある。
一般的には「お母さんも大変なんだな」と想像する場面だが、この物語では、
「なんで自分ばっかり苦労するの!」と母親が自分の不幸を嘆いているシーンに見える。
 
是枝監督も「母親役をどうするかがこの映画を作るうえで大きなテーマだった」と書いている。
単に悪い母親ではなく、「ポジティブな無責任さ」を発散する人ということでYOUさんに決まったということだが、
「ポジティブな無責任さ」って、何なんだろう?
「情けは人の為ならず」を「情けをかけると本人を甘やかすことになって為にならない」、
という意味だと思う人が増えているそうだが、何となくそれと似ている。
 
一番下の妹が死んだとき、兄弟たちは誰も泣かない。
明は、その冷たい躰に触れて、「なんかすごく気持ち悪い…」というようなことを言う。
このシーンについて、「少年ははっとするほどに強く、そして確かな生命力に溢れている」
という文章がプログラムに掲載されていたが、そうだろうかと思う。
妹が死ねば深く動揺し、嘆き悲しむ。
それは弱虫でも何でもなく、むしろ人としての当たり前の心を持っている証ではないかと思う。
この作品を見て、子供らを美化したり、たくましいと感心したり、頑張って生きろと思うのは、
この映画のタイトル同様「みんな知らんぷり」している大人なんじゃないかという気がしてしまう。
 
この映画が行き場のない子供らの漂流生活を描いたものだとすれば、
自分もまたその答えを見つけられないまま、迷路に迷い込んでしまったのかもしれない。
 
 
 
DATA
日本映画/2004年/監督・脚本・編集(是枝裕和)/ゼネラルプロデューサー(重延浩、川城和実)/
音楽(ゴンチチ)/挿入歌(タテタカコ「宝石」)/
出演(柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU)