「僕が9歳だったころ」
−When I Turned Nine−
 
 
 
舞台は、1970年代の韓国・慶尚道という田舎町。
主人公のヨミン少年(キム・ソク)が小さな家から古い町並みを抜けて小学校へ出かけるオープニングから、
どことなく懐かしいノスタルジックな世界に引き込まれてしまう。
何よりヨミン少年がとてもいい。
声が低く、ちょっと大人びたガキ大将で、親友のギジョン(キム・ミョンジェ)や
幼なじみの女の子クムボク(ナ・アヒョン)といつでも一緒にいる。
上級生でさえ一目置くというヨミン少年は、度胸が据わっていてケンカがめっぽう強く、
それでいてお母さん思いの心優しい小学3年生なのである。
そこへ、「アメリカ育ち」の美しい少女ウリム(イ・セヨン)が転校してきて、
平凡に過ぎるかに思えた生活の中でドラマが動き出す!
このウリム少女もとても可愛らしく、ちょっと訳ありな感じがドラマに深みをもたせている。
「小学生の恋って、こんな風だったよな〜」と遠い昔に思いを馳せつつ、ただただまばゆい世界…。
次から次へと起こる珍騒動を通して、小学3年生の「かけがえのない日常」が再現されていく。
 
それにしても、「なぜ、9歳なのか?」
プログラムの解説には、「大人への階段を上り始めようとする年齢、それが9歳」と書かれていたが、
たまたま自分も同じような感覚をもっていたので、うれしくなってしまった。
あの頃のことを正確に思い出すことはできないが、大人が思っている以上に、
9歳の子供が見ている世界は、間違っていないんじゃないかと思える。
確かに子供は知らないことが多く、うまく説明もできないし、9歳くらいだと幼稚なことを言って喜んだり、
腕力だって絶対的に大人が優位に立てるから、つい子供扱いしたくなる。
しかし、大人が無意識のうちに誤魔化したり、諦めたり、都合よく見過ごすようになってしまったことも、
彼らはちゃんと真っ直ぐに見ていたりする。
映画の中に出てくる「小部屋の哲学者」や怖い担任の先生、眼鏡屋の店主との交流シーンを見ると、
子供は大人よりもよっぽど真摯に人生と向き合っている気がしてくる。
ずっと9歳の心を持っていたいと思うが、
やはり、9歳の子供にしかもてない世界があるのだなぁと、
見ていて羨ましくなってしまった。
 
ヨミンとウリムの恋のさや当ては、本当に微笑ましい。
ちょっとしたことで喧嘩して、ちょっとしたことで仲直りして…。
最後の方に出てくるウリムの挨拶、そして二人のプレゼント交換までは圧巻だった。
子供たちの友情や愛情が画面一杯にあふれ出してきて、本当にすばらしい!
見てのお楽しみだが、なんて素敵なエンディングを思いついたのだろうと、
とても清々しい感動のまま、幕を閉じる。
 
ユン・イノ監督は、1963年釜山生まれである。
「バリケード」(97)、「マヨネーズ」(99)に続く第3作目だが、
日本で広く知られるのはたぶん今作からになるだろう。
韓流ブームとは一線を画す作品だと思うが、イ・ジョンヒャン監督の「おばあちゃんの家」(02)にも相通じる、
家族や人と人とのあるべき絆がきちんと描かれている作品だと思う。
個人的にも最優秀作品賞をあげたいような、大好きな作品になった。
 
                            
日比谷シャンテシネ
 
 
DATA
韓国映画/2004年/監督(ユン・イノ)/原作(ウィ・ギチョル)/脚本(イ・マニ)/
製作(ファン・ギソン・フィルムズ)/音楽(ノ・ヨンシム)/美術(シン・ジョミ)/
出演(キム・ソク、イ・セヨン、ナ・アヒョン、キム・ミョンジェ)