「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
-NEBRASKA-
 
 
 
ロードムービーは基本的に苦手。
派手なドラマがなく淡々とした感じが物足りないのかもしれないが、
本当のところの理由がいまだ判然としない。
今作もロードムービー独特のまったりした作品。
しかもモノクロで、主人公ウディ(ブルース・ダーン)は、少し痴呆気味のような老人である。
「100万ドル当選」という偽の通知を手に、モンタナからネブラスカまで歩いて行こうとする。
警察に保護され、家族に止められても、勝手に抜け出してはネブラスカへ向かう。
何だか眠たそうな話。
ではあったが、登場人物らが微妙に「変」なのでもった(笑)。
 
懸賞金がインチキであることを納得させる目的で次男のデイビッド(ウィル・フォーテ)が
父ウディを車(スバル・アウトバック)でネブラスカ州リンカーンまで送っていくことになる。
このデイビッドが親孝行者のとてもいい奴であった。
自身のプライベートでは、同棲していた恋人が出ていってしまい冴えない日々を送っているのだが、
その彼女が全くいけてない感じなのも可笑しい。
ネブラスカ州に入ると、ウディの生まれ故郷でもあるホーソーンのレイ伯父さん(ランス・ハワード)の家に立ち寄る。
ウディも兄のレイも無口で、15年以上ぶりの再会もし〜んと静まりかえった様子で妙な感じ。
唯一、レイの息子らが口火をきるのが、スバルで1日半かけて来たこと。
大排気量のアメ車をよしとする二人には、「スバルで1日半」がツボらしく、
何度もデイビッドにツッコミを入れて大笑いしている様子が妙に可笑しかった。
 
思い違いの懸賞金にもかかわらず、ホーソーンでは「本物」という話で盛り上がっていく。
昔、金を貸したとか世話をしてやったとか、いろんな話が次々出てくる。
当たってもない金を狙われるウディ家を守ろうと毅然と立ち上がる妻のケイト(ジューン・スキッブ)が強烈だった。
若い頃は多くの男たちがブルマの下を狙っていたと公言して憚らないのだが、
どうやらそれも彼女の思い込みが過ぎる様子。
何だかんだ掴み所のないまま物語は進んでいくのだが、
意外なラストに不覚にも涙が…。
 
「この新作の注目すべき点のひとつが”寄り道”だ」と大場正明氏(映画評論家)のコメントがあったが、
まさしくこの作品は、「目的地」と「寄り道」の話である。
多くの場合、目的を果たすことをよしとし、寄り道などせずひたむきに邁進する姿に喝采を送る。
先月(2014年2月)行われたソチ・オリンピックのフィギュア女子で、
金メダル候補の浅田真央選手がSPでまさかの16位に沈み、本人はおろか日本中が落胆してしまった。
2020年東京五輪パラリンピック組織委員会会長の森善郎元首相などは、
「あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね」と発言していた。
しかし、翌日のフリーでは、自己最高得点の完璧な演技で終え、
メダルは逃したものの、それ以上の感動と感銘で世界を席巻した。
森元首相は多方面から批判されることになった。
しかし、こういう失言の根っこにある価値観は、多くの人が共有している可能性があると思う。
ひとたび目的を定めてしまうと、そこからはずれたことは目的外の不要なものだと考えがちだ。
合理的、効率的ではあるが、目的の外に何もないわけではない。
時には、目的以上の価値が発見されることもある。
 
今作の場合も、100万ドル獲得という目的が叶うはずもなかった。
しかし、その旅の過程で大事なものを見つけることになる。
誰もが忘れがちな「寄り道」の意味に、ハッと気付かされる傑作である。
 
 
DATA
アメリカ映画/2013年/115分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/
監督(アレクサンダー・ペイン)/製作(アルバート・バーガー、ロン・イェルザ)/
脚本(ボブ・ネルソン)/音楽(マーク・オートン)/
出演(ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ボブ・オデンカーク)/
字幕(丸山垂穂)