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「風の谷のナウシカ」
−NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WIND−
「木々を愛で虫と語り 風をまねく鳥の人…その者 青き衣をまといて
金色の野に降り立つべし 失われた大地との絆を結ばん…(トルメキア古代伝承より)」。
「火の7日間」と呼ばれる最終戦争から1000年がたった世界にも、
依然として環境破壊の傷跡が残り、人類は争いを続けている。
そんな設定から始まるこの物語は、未来の地球を舞台にしつつ、現代人がかかえる問題をあぶりだし、
どうしたら夢や希望を持ち得るのかを描いている。
1984年の公開以来何度か観ているが、
全く古びることのない普遍的なメッセージにいつも深い感動と感銘を受ける。
この作品の原点ともいえるのが、1978年にTV放映された「未来少年コナン」だろう。
アレグサンダー・ケイの原作「残された人々」は相当暗い話だったそうだが、
宮崎監督は超人的な身体能力をもった明るい少年コナンと、
不遇な運命にありながら優しさと芯の強さをもった可愛らしい少女ラナちゃんを主人公に、
未来志向の冒険ファンタジーを創りだした。
NHKだったせいか、視聴率は振るわなかったそうだが、個人的には本当に大好きな番組だった。
コナンはどんな苦境にあっても決して諦めない鋼のような強さをもっていたし、
ラナちゃんはたとえ敵対する悪党に対しても常に優しい心を持っていた。
力と愛、この二つが共にバランスよく保たれたとき、
世界の未来は希望に満ちたものになり得るのかもしれない。
コナンとラナちゃんが「風の谷のナウシカ」では、
「青き衣をまとった伝説の人」となって生まれ変わったのだと思える。
「その人」は、風を読み、虫と語らうことができる。恐れが争いを生むことを知り、
人々が安心して暮らせる世界を心から願っている。
タフな心と強靱な体力、そして俊敏な行動力はまるでコナン少年だし、
人々を救うためなら自らの命をも捧げようとするところはラナちゃんのようである。
まさに理想の人物である。だから、伝説の人なのだろう。
今作のクライマックスでは、そんな伝説の人の出現を目撃することができる。
王蟲(オーム)から伸びてきた幾千もの触毛が金色の草原になり、
その上を青き衣をまとったナウシカが歩いていく。
あまりにも美しいシーンに久石譲氏のメロディが重なり、思わず涙があふれる。
宮崎駿氏は、宮崎航空興学を経営する一族の出だという。
そのせいか、作品中にはたくさんのユニークな飛行艇が登場し、
今作でもメーヴェという小型機でナウシカが大空を飛びまくる。
「子供たちに世界の広がりを感じて欲しい」そんな願いも込めての描写らしいが、
常に子供たちの目線で作られてきたのが、宮崎作品だともいえる。
勧善懲悪じゃないのも特徴的で、人それぞれに生き方や言い分はあるだろうという基本スタンスが
多くの人の共感を生んでいるのかもしれない。
アニメ史に残る名作である。
DATA
日本映画/1984年/116分/原作・脚本・監督(宮崎駿)/プロデューサー(高畑勲)/
製作(徳間康快、近藤道生)/作画監督(小松原一男)/音楽(久石譲)/
声の出演(島本須美、辻村真人、松田洋治、榊原良子)
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