|
「もののけ姫」
「タタリ神」に取り憑かれた巨大イノシシが森を切り裂きながらエミシ一族の里に突進してくる冒頭シーンから、
もの凄い迫力で迫ってくる。
美術監督5人衆は、宮崎監督のイメージを絵にするために、実際に屋久島などにロケへ行ったという。
背景画だけで1400枚というシシ神の森は、宮崎アニメならではの美しさがあり、
また、目まぐるしく展開する映像は、見ていて本当に圧倒される。
考えてみれば、宮崎作品は、「未来少年コナン(1978)」や「ルパン三世/カリオストロの城(1979)」など、
初期作品の頃からスピード感あふれ、高所恐怖症の私など背筋がゾクゾクするような高低差、
遠近感を表現するのが実にうまかった。
技術的なことはわからないが、カットの動かし方やアングルの撮り方などにも独特のセンスがあるように思う。
「もののけ姫」は、室町時代の日本を舞台に、山深い森に生きる獣たちと、
自然を切り拓いてゆく人間らを対峙させながら、
急速に進む環境破壊という今日的テーマを検証する物語と思える。
森に生きる野生的な少女サン(元になった話の「三の姫」から付いた名)、
巨大な製鉄工場「タタラ場」を支配している女主人エボシ、
その両者の間をタタリ神の呪いを背負った主人公アシタカが行き交うという設定で、
物語はぐいぐいと見る者を引き込んでいく。
数億年も前からあった氷河がわずか100年間の産業化により溶け始めるなど、我々の住む地球は、
非常に深刻な状況に陥っており、この作品が放つ警鐘もとても深刻である。
「今からでも遅くはない。いや、もう手遅れかもしれない。それでも今、何とかしないと。」
そんな宮崎監督の切羽詰まった思いが伝わってきて、胸が熱くなる。
日本の巨人伝説にでてくるディダラボッチが、物語の後半に登場する。
宮崎監督のインタビューで、「あれはつきつめていくと、原爆のイメージになる」と語っているが、
見ている方は、そうとは意識せず、しかし、無意識のうちにそういったイメージを感じて無気力になる。
人間はうんざりするほど何度となく大量殺戮を繰り返している。
もういい加減にしろ!うんざりだ!
宮崎監督のそんな気分が伝わってくる。
ラストは、しかし。
サンは森へ帰り、アシタカはタタラ場で生きる道を選び、
そして「共に生きよう!」とアシタカに言わせている。
行き過ぎた環境破壊に警鐘をならしつつ、それでも生きる道はあるのではないか。
この作品は、根底に深い絶望感をもちつつ、最後は肯定的に結ばれて救われるが、
それは、たぶん、宮崎監督が、一連の作品を子供らへのメッセージとして作っているからだろうと思う。
DATA
日本映画/1997年/原作・脚本・監督(宮崎駿)/製作総指揮(徳間康快)/
製作(氏家齋一郎、成田豊)/音楽(久石譲)/唄(米良美一)
声(松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、美輪明宏、西村雅彦、森繁久弥)
|