「ミックス。」
「逃げ恥」のブレークで今一番旬な女優の一人、新垣結衣と瑛太のダブル主演。
監督と脚本は、「エイプリルフールズ」(15)でもタッグを組んだ石川淳一と古沢良太。
万全の布陣といっていいだろう。
が、「エイプリルフールズ」の「ぴあ映画生活」の得点は66点と意外に低評価!
個人的には、結構楽しめたので80点をつけたのだけど…。
タイトルのミックスとは、卓球の男女ペア種目を指すが、古沢さんの着想は、
ロマンティックコメディとスポーツをミックスするということにあったようだ。
僕が初めて古沢さんの脚本に衝撃を受けたのは、「キサラギ」(07)だった。
売れないアイドル・如月ミキが自殺し、その一周忌に集まった見ず知らずのファンによって語られるエピソードが面白く、
二転三転する新事実に驚かされつつ、すべての真相が明らかになったときの感動が素晴らしかった。
胡散臭い人物らの嘘くさい話に呆れたり笑ったりしながら、最後には、
人間という生き物への愛おしさであふれ、嬉しくて涙がでていた。
「エイプリルフールズ」も、根っこにある価値観は似ている。
以前、死んだふりをした弱った狸(いわゆる狸寝入り)を間近にみたことがあるが、
多くの生物が時には「嘘」をついてでも生き延びようとする必死さに感動する。
それにしても、人間の「嘘」はなかなか巧妙である。
虚言、知ったかぶり、二枚舌に虚勢、暴言といった大小様々な嘘がいっぱいある。
嘘をつく理由も様々で、相手を支配するためだったり、自己弁護であったり、
他人の気を引くためであったり、相手を思いやる優しい嘘もあるが、
そんな優しい自分アピールが真の目的だったりもして、一筋縄ではいかないものである。
それらがエゴにみえて嫌になることもあるが、生命体が自己の存続を何より優先させるのは宿命でもあり、
そこに人間の本質がみえて、興味深くもある。
古沢さんが創る物語の主人公は、大抵不器用で必死に生きている人が多い。
「ALWAYS 三丁目の夕日」(05)の茶川(吉岡秀隆)や「寄生獣」(14)の泉(染谷将太)しかり、
「鈴木先生」(13)の優秀な先生(長谷川博己)だって、土屋太鳳扮する女子高生にHな妄想を描くダメダメな一面をもっている。
それは、ときに滑稽で哀しくて惨めだったりするが、笑いにくるんで見せていく。
その視点は鋭く皮肉も効いているが、根底に人間への愛情を感じないではいられない。
前置きが長くなったが、本作の主人公多満子(新垣結衣)は卓球一筋のちょっと不器用なキャラ、
萩原(瑛太)も元ボクサーで定職なしのバツイチ男という設定である。
多満子の前に突然現れた卓球界の王子・江島(瀬戸康史)に言い寄られて舞い上がった揚げ句、
適当に遊ばれて捨てられる「痛い女子」は、「エイプリルフールズ」の新田(戸田恵梨香)と重なる。
ホントと嘘を巧みに使い分ける要領のいいタイプと、そういう一切が苦手な不器用なタイプの表裏がしっかり描かれているからこそ、
「一生懸命に生きている人間をバカにするんじゃない!」の台詞が、効いてくる。
やがて、多満子と萩原が各々の幸せをつかみかけた夜、眠れずにいるシーンがいい!
人は案外、自分の気持ちがわからない生き物なのだと思う。
身を守ることを優先する習慣がついていると、自分の本心さえ偽ってしまうから…。
工場に萩原が多満子を迎えにくるシーンで、ふと、ビリー・ワイルダー監督の「サンセット大通り」(50)を思い出した。
いつも側にいて、でも、夫婦でも恋人でもない、それでも大切な相手の存在に気付くシーン。
ロマンチックコメディといえば、ビリー・ワイルダーだろう。
もしかしたら、古沢さんはワイルダーファンなのかもしれないなっと思えた。
物事を、世界を、人間を複眼的に眺める視点が、僕も好きだ!
これって、ミックスってことなんだなぁ…。
DATA
日本映画/2017年/119分/ビスタビジョン/
監督(石川淳一)/脚本(古沢良太)/プロデューサー(盛河広明ほか)/
音楽(末廣健一郎)/
出演(新垣結衣、瑛太、広末涼子、瀬戸康史、永野芽郁、蒼井優、真木よう子)