「ミロクローゼ」
−Milocrorze−
 
 
 
唯一無二。
これぞ映画、これが映画だ!と感極まってしまった。
オープニングからエンドロールまで、音楽といいタイトルの見せ方といい、
細部にまでこだわり抜いた作り手の美意識にワクワクさせられどおしだった。
ストーリー、美術、音楽、キャラクターなど全方面に惜しみなくアイデアが詰め込まれている。
石橋監督がいうように、近年の邦画は漫画かテレビドラマの焼き直しばかりが脚光を浴びている。
勿論、そんな中に秀作、傑作も多く、一概に悪いとは思わないが、
映画らしさという点で物足りなさを感じる作品も少なくない。
少し前にもベストセラーを原作にした「カラスの親指」を見て、
こぢんまりとまとめたテレビドラマを見ているようで物足りなさを感じたが、
それが世間一般で高く評価され、大ヒットしている現状がどうにも解せないでいた。
そんなモヤモヤを思いっきり吹き飛ばしてくれたのが「ミロクローゼ」だった。
とにかく破天荒で痛快、見終えた後に何も残らないくらい完全燃焼系の傑作である!
 
ミロクローゼとは、「太陽」を意味する監督の造語らしい。
山田孝之が一人で演じ分ける3人の男は、
それぞれに自分を照らしてくれる愛の象徴=太陽を追い求めている。
絵本の世界に住んでいる少年のような容姿のオブレネリ・ブレネリギャー、
毒舌の青年相談員・熊谷ベッソン、そして、片目の浪人・多聞(タモン)。
この極端すぎる3人のキャラに合わせて、
中島哲也監督の「パコと魔法の絵本」やラジニカーントのマサラムービー、
クエンティン・タランティーノの「キル・ビル」を彷彿とさせるようなシーンが次々と入れ替わり、
一度に3本の映画を見ているような、90分とは思えぬ充実感があった。
全く荒唐無稽で、現実的にはあり得ない話ではあるが、
物語としてのリアリティはあるため、感情移入できるのかもしれない。
一人三役で演じ分けることによって、三人三葉であることと同時に、
一人の人間の中にも弱さや破壊的な面など様々な面をもっていることが表現されている。
バラバラの3人が微妙につながっていく構成も、なかなか巧くできていた。
全く説明的ではなく、直接感性に訴えかけてくるビジュアル的で斬新な作品である。
映画の醍醐味と可能性を押し広げる新たなチャレンジに大きな拍手を送りたい。
 
「人間関係が希薄になってしまっている現代、真剣にもっと恋をしよう」というのが、
監督が一番言いたかったことだそうだ。
確かに登場人物たちは、キャラは違えども、いずれも無鉄砲で熱い!
そんな登場人物に対する好みが観客の性別でハッキリ分かれるという。
女性は、愛する恋人を命がけで探し求める多聞(タモン)を好み、
男性は、ズバズバと罵声を浴びせる超カリスマ相談員のベッソンを支持しているようだ。
確かにベッソンはいい。
あの踊りは、ぜひ映画館で体感してほしい!
 
渋谷シネクイント
 
 
 
DATA
日本映画/2010年/90分/アメリカン・ヴィスタ/監督・脚本・美術・編集・音楽(石橋義正)/
プロデューサー(泉正隆他)/音楽(久保田脩他)/
出演(山田孝之、マイコ、石橋杏奈、佐藤めぐみ、原田美枝子、岩佐真悠子、奥田瑛二)/