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「ミッドナイト・イン・パリ」
−Midnight in Paris−
ウディ・アレン監督は、ほぼ毎年のように映画を撮り、今作で42作目となる。
初めて見たアレン作品は、たぶん、アカデミー賞4部門受賞作「アニー・ホール」(77)だったと思う。
本人の性格を色濃く投影していると思しき冴えないルックスの主人公が
当時、アレンの恋人だったダイアン・キートンを相手役に織りなす都会的ラブ・ストーリー。
気難しい主人公の台詞まわしが面白く、ニュー・ヨーカーの日常を覗き見るような楽しさもあった。
それから、同じくニュー・ヨークを舞台にした「マンハッタン」(79)、
「カサブランカ」をモチーフにした「ボギー!俺も男だ」(72)をビデオかテレビで見て、
「カメレオンマン」(83)、「ブロードウェイのダニー・ローズ」(84)、「カイロの紫のバラ」(85)、
「ハンナとその姉妹」(86)、「ラジオ・デイズ」(87)までは続けて、公開時に見た。
以来、アレン作品を見るのは、4半世紀ぶりである。
個人的なマイベストは、たぶん「カイロの紫のバラ」だろう。
またしても当時の恋人ミア・ファローを起用し、大好きな映画を何度も見ているうちに
映画の世界に入ってしまうという傑作ファンタジー。
この「ミッドナイト・イン・パリ」も1920年代のパリへタイムスリップするという寓話。
コール・ポーターやヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ピカソ、
ダリらとの交流に驚喜する主人公ギル(オーウェン・ウィルソン)がなかなか可笑しい。
このギル、パッとしない風貌にお洒落のセンスも今ひとつなのだが、実は超売れっ子の脚本家でもある。
しかし、超美人の婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とはややすれ違い気味。
現実逃避か理想の追求かよくわからぬうちに1920年代へタイムスリップしてしまい、
ピカソの愛人、アドリアナ(マリオン・コーティヤール)と出会って、恋に落ちる。
ギルを見ていると段々とアレン本人と二重写しになってきて可笑しかった。
ウィットとペーソスに富み、お洒落な音楽や洒脱な会話があふれ、
肩の力を抜いて楽しめる娯楽作品である。
アレン監督の大部分の作品は、ニュー・ヨークを舞台にしている。
最近になってパリやロンドン、バルセロナといった都市も登場するようになってきたが、
いずれにしても都会が舞台なのである。
都会には人がたくさん集まっている。
男女の出会いもあれば、諍いも起こる。
道は混むし、物価も高いし、空気も汚れている。
何かと面倒なことが多いと思えば、都会に住む人はずっと少ないはずだが、
むしろ人口が減っているのは地方の方である。
都会の魅力をそこに住む人々にカメラを向けながら探究し続けているのがアレン監督である。
過ぎ去った時代ばかりに価値をみる懐古主義に向かうと見せかけておいて、
さらりとかわす脚本のマジックもなかなかよかった。
自分に合う道を見つけたギルが雨降るパリを意気揚々と歩くハッピー・エンディングが嬉しかった。
DATA
スペイン・アメリカ映画/2011年/94分/アメリカン・ビスタ/
脚本・監督(ウディ・アレン)/
製作総指揮(ハビエル・メンデス)/撮影監督(ダリウス・コンジ)/
出演(オーウェン・ウィルソン、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムス)/字幕(石田泰子)
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