「少年マイロの火星冒険記3D」
−MARS NEEDS MOMS−
R・ゼメキス作品と聞けば、つい期待が先に来る。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ(85,89,90)や「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94)、
「コンタクト」(97)など、息つく間もないスリルと心温まる作風に好感がもてる。
今作の監督は、SF作家、H・G・ウェルズの曾孫に当たるS・ウェルズ。
ディズニーの子供向け映画という感じだが、大人でも十分堪能できる内容だった。
まず目を引くのは、火星や火星人のキャラクター・デザイン。
3Dもよく出来ていて、まさに「体感」する映画。
例えていえば、ディズニーランドのアトラクションにトロッコに乗って入っていく感覚に近い。
火星の平均気温はマイナス65℃なので、火星人はもっぱら地下に住んでいるという設定。
地下は4層構造になっていて、層ごとに違った雰囲気の街になっている。
また、光の届かない地下に住む火星人の目は大きいだろう、鼻はいらないだろうということで、
ETのような顔になっている。
プロダクション・ノートを読むと、キャラクター設定から撮影、編集まで本当に楽しそうだ。
スタッフで議論しながら「火星語」を考案し、専門の辞書まで作って、
俳優には火星語の語学練習をさせたそうだ。
仕事がこんなに楽しいなんて、思わず羨ましくなった。
この作品には、R・ゼメキスが考案し、「ポーラー・エクスプレス」(04)や「クリスマス・キャロル」(09)でも
使われたパフォーマンス・ピクチャーの技術が使われている。
これは特殊なカメラで俳優の演技、特に顔の表情を読み取り、それを元にCGでデザインしていく方法。
アニメと実写のハイブリッドのような映像は少々不気味でもあるのだが、
見慣れるとすっかり違和感は消える。
この作品は、まるで火星探検をしているような3D映像を体感しているだけで十分楽しめるが、
根っこには現代社会への風刺が込められている点も見逃せない。
ここ最近、日本でもイクメンという言葉が浸透してきてはいるが、
大半は母親任せというのが実態だろう。
この作品でも父親の出番はとても少なく、
火星ではもはや男の要らない女性社会が成立してしまっているという思わず苦笑の設定になっている。
その辺の風刺とユーモアはマンガ的な面白さではあるが、
うまく物語に組み込まれていてよかった。
マイロのママの声を演じたジョーン・キューザックの言葉を借りればこうだ。
「親であることと友達であることは別物だという考え方がとても好きよ。
これは子どもと友達になることを描いた物語ではないの。それ以上なのよ。
それ以上に無私無欲なもの。だからこそ、厳しいことを言ったり態度で示したりしなければならない。
それが子どもをきちんと成長させるために大切だからよ。」
エンターテイメントにくるまれつつもなかなか教育的なのだ。
こういう作品をコンスタントに世に出し続けてきたディズニーという会社は、大したものだと思う。
自分たちが何を発言し、何を為すべきか。
職業人の一人として、よくよく見習いたい気分にもなる…。
DATA
米国映画/2011年/89分/監督(サイモン・ウェルズ)/
製作(ロバート・ゼメキス、ジャック・ラプケ、スティーヴ・スターキー、スティーヴン・ボイド)/
脚本(サイモン・ウェルズ、ウェンディ・ウェルズ)/原作(バークリー・ブレスト)/
音楽(ジョン・パウエル)/吹替版翻訳(杉田朋子)
日本語出演(濱田龍臣、設楽統、本田貴子、間宮康弘、藤村歩、京田尚子)