「きれいなおかあさん」
−漂亮媽媽−
 
 
 
ミニシアター系が最近活況!にしても、平日でほぼ満席という状況には驚いた。
その中に、ろうあ者のグループも見に来ていた。
「?」
その疑問符は、映画が始まってすぐに消えた。
 
舞台は現代中国、とある母子家庭が主人公である。
離婚した二人は今も時々会っているが、どこかで気持ちを引きずりつつ、どこか刺々しい。
子供は、生まれつき耳が聞こえない。
その障害が原因で、夫婦は別れた。
ぶっきらぼうで荒削りな、まるで短編小説を読んでいるような感覚を味わいつつ、
アッという間に物語の中に引き込まれていく。
 
母は生活のために仕事をしながら、さらに子供のため、寸暇を惜しんで言葉を教え、文字を教える。
生きることに必死なのである。
それは本当に当たり前のことなのに、近頃の日本では、そうは思われてない。
生きていくことは辛いこと。
そういう前提条件のうえに毎日の生活があることを、僕たちは忘れかけている。
辛い目に遭うと、「どうして自分だけ?」と思う。
 
主演コン・リーの魅力は、一体何なんだろう?
美人は美人としても、とびきり美人というのでもない。
今回は役柄に合わせてノー・メイクだったりする。
それでも、もうこの人から目が離せなくなる。
コン・リーを見ていると、これが映画(フィクション)であることさえ疑いたくなる。
主人公の揺れる心、葛藤、苦悩、心配、悲しみ、怒り、喜び…
そういった心の中の出来事を見事に表情で表して美しいのである。
言葉も、とてもキレイ。
彼女の発音を聞いていると、中国がもつ雄大な歴史、広々とした自然の広がりが伝わってくる気がする。
 
この映画をみると、かつて母親が献身的に生きたことを思って涙がこぼれる。
そしてまた、人間が不平等な境遇である不条理を認めて、覚悟ができる。
とてもすばらしい映画である。
 
 
 
DATA
中国映画/1999年/監督・製作総指揮(スン・ジョウ)/
脚本(リュウ・ホン、スン・ジョウ、シャオ・シャオリー)
出演(コン・リー、ガオ・シン)/音楽(チャオ・チーピン)