「マレーナ」
 
 
 
この映画の素晴らしさは、ラストまでわからない。
 
長い物には巻かれろと云うように、人の心は、ときに信念もなく統制され得る。
とくに群衆の心理は、いとも簡単に寝返り、裏切る生き物である。
シチリアの漁村におけるマレーナの人生は、そんな勝手な人間たちの心に翻弄される。
 
12歳の少年レナートが一目惚れするマレーナは、美しい。
結婚して2週間で戦場に駆り出された夫を想う清楚な女性は、前半、完璧な女神である。
しかし、後半、夫の戦死により、未亡人となったマレーナは次第に落ちぶれてゆく。
生活のためとはいえ娼婦に変幻し、いつかの女神は見る影もなく失われてゆく。
「もう嫌な女!」と見ていて思うし、映画自体の印象までが汚れていき、
「ニューシネマ・パラダイス」や「海の上のピアニスト」を期待していると、全くはずされてしまう。
 
しかし…、
死んだはずの夫が片腕を失って還ってくるあたりで、物語は急展開する。
娼婦になり村を追われたと聞かされ途方に暮れる夫に、レナート少年が手紙を書く。
「村の人は悪いことしか言わないけど、僕は知ってます。
マレーナさんはあなただけを愛し、あなたを待っています。」
ラスト5分に凝縮された美しさとレナート少年のひたむきな心に拍手喝采!
 
この映画の素晴らしさは、ラストまでわからない。
本当に、最後の最後まで。
たぶん、ぼくらの人生と同じように。
 
 
 
DATA
イタリア・アメリカ映画/2001年/監督・脚本(ジュゼッペ・トルナトーレ)/
原作(ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ)/主演(モニカ・ベルッチ)/
音楽(エンニオ・モリコーネ)