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「マレフィセント」
-MALEFICENT-
「眠れる森の美女」は元々、ヨーロッパに古くから伝わる民話だったそうな。
それからグリム童話「いばら姫」やチャイコフスキー作曲のバレエ「眠れる森の美女」(1890)になり、
ディズニーアニメ「眠れる森の美女」(59)へと受け継がれてきた。
従来、邪悪な妖精として描かれてきたマレフィセントを主役に据え、
彼女の視点で創られているのが今作のオリジナリティである。
見終えてすぐ、「ダース・ベイダ−」が思い浮かんだ。
もっぱら悪役として描かれていたのが、「スター・ウォーズ・エピソードT」(99)では、
アナキン・スカイウォーカー少年(後のダース・ベイダー)の視点で描かれ、
世の中を反対側から見るような面白さがあった。
ダークサイドにもそれなりのルールや正義があるという話は、
「ゴッド・ファーザー」をはじめ様々な作品で繰り返し描かれてきたテーマである。
「立場が変われば見方も変わる」わけで、
見方が変われば、悪人だって善人に見えてしまうもの。
性善説か性悪説か、おそらく永遠に解かれることのない謎なのだろう。
「マレフィセント」は、ロングランを続けている「アナと雪の女王」(14)と共に
ウォルト・ディズニー創立90周年記念作品である。
両作品に共通していると思ったのは、勧善懲悪ではないこと、
そして、「真実の愛」が白馬に乗った王子様ではないことだった。
どちらも従来のディズニーアニメでは考えられないことだが、
「アナと雪の女王」の監督・脚本を担当したジェニファー・リーが、
「今のことだと感じられるものを創りたかった。」と述べているように、
昨今のご時世を反映した設定なのだろう。
今、世界は、唯一の超大国だったアメリカ中心の世界から、
多極化する大国が拮抗する時代に移り変わってきている。
イラクへの軍事介入をブッシュ大統領が十字軍に例えて物議を醸したように、
アメリカの正義も敵からみれば悪だということが世界基準になったということだろう。
そしてまた、女性の社会進出と自立によって、
必ずし王子様の登場を待つ必要がなくなったということがあるのかもしれない。
勧善懲悪を封印し、王子様も役に立たずという「アナとマレフィセント」の物語が、
驚異的な興行記録をもって受け入れられている現実は、一体何を物語っているのだろうか。
来たるべき近未来を暗示しているのか、
それとも現実とは似て非なるお伽噺として終わるのか、興味深いところである。
DATA
アメリカ映画/2014年/97分/スコープサイズ/ドルビーサラウンド7.1&5.1
監督(ロバート・ストロンバーグ)/脚本(リンダ・ウールヴァートン)/
製作(ジョー・ロス)/音楽(ジェームズ・ニュートン・ハワード)/
出演(アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、シャールト・コプリー、レスリー・マンヴィル)/
字幕(吉田由紀子)
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