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「魔法にかけられて」
−ENCHANTED−
もうかなり前のことになるが、子供と一緒に見ていたTV版「くまのプーさん」の中で、
主人公のクリストファー・ロビン少年がプーさんと「何もしないということをしようよ」と話す場面があった。
そういえばここのところ、日々何かに追われているようで、
それはそれで充実感があり、楽しくもあるのだが、
なんとなく一息ついて気分転換したい気がしていた。
でも、本当に何もしなければいいのかというと、そうでもなさそうで、
何か日常にはない別のことをしたい気分だった。
でも、どうしたらいいのだろう?
「魔法にかけられて」は、そんな自分の気分にぴったりの映画だった。
ケヴィン監督が作り上げたのは、ディズニーのプリンセス・アニメ「白雪姫」「シンデレラ」
「眠れる森の美女」「リトル・マーメイド」「美女と野獣」、
これら5本のアニメを1つに集約した映画だった。
「プリンセスたちはみんな、自分の目標を達成できるとかたくなに信じていて、
決して諦めたりしないことに驚いた」と監督が指摘しているように、
ディズニー映画の根底には、夢を見るのと同時に夢を実現するために強い信念が貫かれているのだ。
物語は、いかにもという感じのおとぎの国の森の中から始まる。
美しい女性がリスやウサギといった森の動物たちと話をしている。
この部分がアニメで作られていた。
およそ11分ほどのアニメーションを作るのに、なんと1年間を費やしたというからスゴイ!
よく見れば、前述した5本のディズニー作品をモチーフに、非常に懲りまくったアニメである。
主人公のジゼルはこの時点ではアニメで、
いつか王子様が現れて、真実のキスをして王女となり、
幸せに暮らす日々=シンデレラ・ストーリーを夢見ている。
アニメで作られたおとぎの国のジゼルが現実社会のニュー・ヨークに来てしまう!
という設定が、今作品のオリジナリティであり、面白いところである。
そこから実写となるジゼル(エイミー・アダムス)は、おとぎの国と現実世界とのギャップにとまどいつつも、
相変わらず夢見心地である。
うまくいかないときは明るく歌えばきっと幸せになれると信じ切ってる姿は、
健気であるが、世間知らずのお嬢様という感じである。
そんなジゼルを見るに見かねて世話する羽目になる弁護士のロバート(パトリック・デンプシー)は、
離婚訴訟専門の弁護士で、自らも妻に逃げられ、夢も魔法も永遠の愛も信じてない男だった。
おとぎの国のエドワード王子(ジェームズ・マーティン)やら魔女(スーザン・サランドン)やらもNYにやってきて、
ありえないようなドタバタが展開するのだが、それがなかなか楽しかった。
歌あり踊りあり笑いありで、やがて訪れるだろうハッピーエンドへと、
予定調和的ではあるが、しかし、いい意味で期待を裏切る展開もあって、不覚なほど感動してしまった。
夢は、やはり夢。どこかで冷めて見ている自分がいたのだろう。
現実には奇跡など起ころうはずもないと思う自分がいつもいる。
でも、もしかしたら、そう自分に言い聞かせてバランスをとっていたのかもしれない。
この難しいジゼル役を演じきったエイミー・アダムスは、インタビューの中で、
「アニメ的なキャラクターを演じるときの秘訣は、
自意識を捨てて自分の中にある『子供』を解放してあげることだと思うわ」と答えていたのが印象に残った。
日々、忙しく何かをしているつもりでいたが、
本当はその逆で、大切なことは何もしてなかったのかもしれない。
映画を見終えてふとそんな風に思えて、不思議と自由な気分になれた。
109CINEMAS(横浜MM)
DATA
アメリカ映画/2007年/108分/監督(ケヴィン・リマ)/
製作(バリー・ジョセフソンandバリー・ソネンフェルド)/脚本(ビル・ケリー)/
音楽&作曲(アラン・メンケン)/衣装デザイン(モナ・メイ)/
出演(エイミー・アダムス、パトリック・デンプシー、ジェームズ・マースデン、ティモシー・スポール)
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