「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」
−STAR WARS / THE LAST JEDI−


152分という長めの上映時間中、何度も目頭が熱くなった。
決してお涙ちょうだい的な作品ではないのに、しみじみと感動するシーンも多い。
それがどこからくるものかを紐解いてみたい…。

今作は、シリーズ9作品の8作目にあたる。
第1作「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」(77)
第2作「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(80)
第3作「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(83)
第4作「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(99)
第5作「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」(02)
第6作「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(05)
第7作「スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒」(15)
第8作「スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ」(17)
第9作「スター・ウォーズ エピソード9」(19予定)
アンソロジー第1作「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(16)
アンソロジー第2作「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(18予定)
アンソロジー第3作「タイトル未定」(20予定)」

いや〜、すごい!
「アメリカン・グラフィティ」(73)の大ヒットで一躍有名になったジョージ・ルーカスが28ヶ月もの時間をかけて草稿した「スター・ウォーズ」。
ありとあらゆるSF小説、童話、神話を読みあさり、「スター・ウォーズ」には約50もの映画の引用があるとルーカス本人が語っている。
中でも有名なのが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」(58)で、キャラクター設定や筋書きが酷似している。
主演の三船敏郎にオビ=ワン・ケノービのオファーがあったとの逸話もあるくらいだ。
ダースベイダーの容姿は戦国時代の甲冑に、ライトセーバーは刀に各々似ているし、
ジェダイは「時代劇」の引用なのも周知の事実である。
黒澤監督を敬愛してやまないルーカスは、黒澤作品で描かれるヒューマニズムや師弟愛といった精神面をも「スター・ウォーズ」で継承したのだろう。
若きジェダイ、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)がオビ=ワン・ケノービやヨーダに師事し、成長していく姿は、
まさに若きルーカスが巨匠・黒澤監督を慕う姿と重なってみえる。

前置きが長くなったが、僕はコアなスター・ウォーズ・ファンではないので、前作までのストーリーもうろ覚えだった。
前作で新たなヒロインとなったレイ(デイジー・リドリー)の活躍が描かれるんだろうなぁくらいな気持ちでみていたら、
意外にもルーク(マーク・ハミル)とレイア姫(キャリー・フィッシャー)の出番が多いのに驚いた。
40年にもなるシリーズのスタート時にはまだ20代前半だったマークやキャリー自身が老齢のルークやレイア姫を
演じていること、そのことがジワジワとした感慨をもたらしたのは間違いない。
有名なレイア姫のホログラムが今作の重要なシーンで使われるのだが、
そのシーンで懐かしさがこみ上げてしまったのは、ルークだけではなく、当時少年〜青年だった観客も同じだろう。
キャリー・フィッシャーは、今作の撮影後に60という若さで他界しており、
劇中にみる年老いたレイア姫を演じるキャリーと重なって、寂しく、悲しくなった。
マークにしても同じである。
前作のラストシーンでちょっとだけ登場した姿があまりに老け込んでいて誰だかわからなかったくらいだが、
今作での活躍をみるにつれ若き頃の面影が蘇り、あの頼りなかった青年がこれほど偉大なジェダイになっていることに
深い感銘を受け、嬉しくなった。
マークは今作でミレニアム・ファルコン号に搭乗するのだが、「コックピットに座ったり、収納スペースに入った後、
その場をそっと立ち去ってから、感極まって言葉を失ってしまった」と語っている。
このシリーズは、家族愛や師弟愛を描いているが、演じている俳優にとっても、観客にとっても一種のファミリーになっているのだろう。
未来だけをみて希望を抱く若者が親や師を見送り、やがて自らも歳をとり、次の世代へとバトンを渡す。
40年という時間経過で実際の人生で起こったことと劇中の物語がオーバーラップすることでの特別な感慨が深い感動につながったように思える。
従って、最近になって全シリーズをまとめてみた若い人に、こうした感慨はないはずである。

タイトルにあるように、今作では、滅びゆくジェダイが描かれる。
ファースト・オーダーにより反乱軍は壊滅寸前である。
追い詰められた状況下で、死にゆく戦士から生き残った戦士へ、或いは、ジェダイマスターから若きジェダイへの
伝承がクローズアップされる。
とある宇宙の片隅での歴史絵巻である本シリーズに相応しく、
世代交代を繰り返しながら人類は連綿と生きながらえていき、やがて伝説になるという「スター・ウォーズ」の原点が感じられる。

1977年に公開された1作目「スター・ウォーズ」の主役はルーク・スカイウォーカーで、彼の成長物語ではあるが、
ハリソン・フォードの人気もあってハン・ソロの活躍が際立っていた。
また、ヒール役のダース・ベイダーの個性も強烈だったがゆえに、主役のはずのルークが霞んでいた感は否めない。
しかし、今作で面目躍如できたと思える!
テレビドラマにもなった「ルーツ」がキンタ・クンテを通じて黒人奴隷の歴史を描いたように、
今作によって、この長い物語がルークを通じて宇宙戦争における人類の光と闇の歴史を描ききったように思えた。
歴史は繰り返し、繰り返しながら続いていくのだろう。
終盤、ルークの口から「最後のジェダイ」という台詞が出てくるが、とても感動的だった。
今作、賛否両論あって、むしろ評判が芳しくないようだが、個人的にはツボだった。
「スター・ウォーズ」はこうあって欲しいという思い入れがないせいかもしれない。
ただ、制作陣たちは、ルーカスの草稿にあるコンセプトもよく調べ、熱い思いで新たな三部作を創り上げたように思うので、
大きな拍手を贈りたい!


DATA
米国映画/2017年/152分/スコープサイズ/
脚本・監督(ライアン・ジョンソン)/キャラクター原案(ジョージ・ルーカス)/製作(キャスリーン・ケネディ、ラム・バーグマン)/
製作総指揮(J.J.エイブラムス、トム・カーノウスキー、ジェイソン・マクガドリン)/音楽(ジョン・ウィリアムズ)/
出演(マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ)
 

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