「くちづけ」
 
 
 
父と娘の話ということは、宣伝用ポスターで一目瞭然。
「余命」とか「知的障害」だとかってキーワードも不本意ながら耳に入ってしまう。
できれば何も知らずに観たいといつも思うが、
ある程度知らないと観るかどうか決められないのも然り。
結果的に、その程度の予備知識なら何の問題もなかった。
それどころか、久しぶりにガツンと打ちのめされる骨太な作品だった。
 
主役の阿波野マコ、観た瞬間に知的障害だとわかる貫地谷しほりの演技には目を見張る。
他の面々も個性派揃いで強烈だが、とりわけ宅間孝行扮するうーやんが圧巻!
冒頭からネジが外れてるかのようにしゃべりっぱなしで、
観ていて疲れるくらい圧倒的な存在感!
舞台の映画化ということもあるが、テンション高すぎ!
グループホーム「ひまわり荘」の中だけで、
ひっきりなしに騒動が巻き起こるジェットコースター・ムービーである。
 
原作・脚本は、うーやん役でもある宅間孝行によるもの。
実話ベースの物語らしいが、とてもよくできている。
全般的にはドタバタ喜劇のような面白可笑しい話だが、
一方で、犯罪を犯す知的障害者が多いといった偏見や性犯罪、ホームレス化の現実なども織り込み、
しっかりとした社会的メッセージになっている点に好感がもてた。
「ケイゾク」(00)、「トリック」(02)、「明日の記憶」(06)、「はやぶさ/HAYABUSA」(11)
といった話題作、傑作を撮り続けてきた堤幸彦監督の力量が大いに感じられる。
 
血液検査で簡単にダウン症の出生前診断ができるとか、
遺伝子診断が新しいビジネスになってきた、
といったニュースが近頃、多い。
優生思想にもつながるこうした動きは古くからあり、
恐らく答のない永遠のテーマであろう。
「くちづけ」はそこまで踏み込んではいないが、
知的障害をもった弱者が生きにくい現状を世に問う作品である。
一人ひとりが受け止め、考え続けるしかないだろう。
個人的には、「情けは人の為ならず」と思う(最近は、誤用の方が多いらしいが…)。
思うだけで完璧に実行できているわけではないが、
そういう方向に社会が進んでほしいと願っている。
自他共楽を常に思い続ける力と愛が必要、と思っている。
 
湘南109
 
 
DATA
日本映画/2013年/123分/監督(堤幸彦)/
製作代表(木下直哉)/原作・脚本(宅間孝行)/音楽(朝川朋之)/
出演(貫地谷しほり、宅間孝行、田畑智子、橋下愛、麻生祐未、平田満、竹中直人)