「恋は雨上がりのように」
主役でみる映画がいくつかある。
女優ならエミリー・ブランドかジェニファー・ローレンス、邦画では小松菜奈だろうか。
コミック原作の映画が多いが、とりわけ、青春ドラマ、ラブコメの類は量産されすぎて、個人的には食傷気味。
今作もまた、同名コミックが原作であるが、小松菜奈主演なので見た。
「夢を失った17歳、夢を忘れた45歳。ふたり、人生の雨宿り中−。
その人は、どしゃぶりの心に 傘をくれた。」
この詩的なコピーのとおり、雨の描写が多い。
雨は、必要悪みたいなものだろうか。
雨だからできることは少ないが、雨だとできないことは多い。
天気も人生もずっと晴れててよと願っていても、時々は雨が降り、嵐の時もある。
そういうときの雨宿りの大切さが伝わってくる作品。
足の怪我で陸上競技を断念した女子高生とパッとしないファミレス店長との不思議な出会いが、
日常の中に起こりうる小さな奇跡を描いて、とても心地よい。
年齢的に大泉扮する近藤店長に感情移入した。
とってもキュートな女子高生、橘あきら(小松菜奈)に一方的に好意を寄せられる羨ましい役である。
しかし、この恋は、年の差を乗り越えて成就するというパターンをとらない。
僕はその展開にこそ安堵し、そこが他と一線を画す今作のオリジナリティに思えて、嬉しかった。
怪我が元で失意のどん底にいたときに、たまたま出会ったオジさんへの恋心。
「人を好きになるのに、理由なんかいるんですか?」と尋ねるあきらに、
「この場合はいるでしょう」と呆れ顔で諭す店長は、大泉洋だからこそ醸し出せる味がよかった。
風邪をひいて寝込んでいる店長のアパートに見舞いにきたあきらと二人きりでいたときに停電になって…。
あまりにもベタなシーンではあったが、コミカルな可笑しさがあったのは、大泉さんゆえだろう。
あきらの求心力が、すごい!
コミックの連載中から「あきらは小松菜奈ちゃんに似ている」という声が多かったそうだが、
見た目もキャラクターも小松菜奈にぴったりで、彼女の魅力全開である。
アルバイト先のファミレスで彼女と店長の関係に気付いた、ちゃらい感じのイケメン、加瀬(磯村勇斗)の存在も重要。
自分の方を振り向いてくれないあきらが気になり始め、強引にデートに誘い出すも、逆に彼女を怒らせてしまう。
その同じデートコースを店長と過ごすシーンが生き生き輝いてみえた。
2回観に行く劇中映画が「寄生獣」なのも可笑しかった。
常識とは、自分が社会で生きていく上で必要なこと。
それに対して、他人のために身につけておくべきことが良識。
そんな言葉を、少し前に新聞の投稿欄に見つけて心に残っている。
原作者の眉月じゅんさんは、「この漫画をラブストーリーと思ったことは一度もない」と語ってるのを知って納得得心した。
この物語は、まさしく良識的な作品なのだ。
それが物足りない、つまらないという人もいるようだ。
しかし、援交やらいたずら目的の女児殺害やらのニュースが日常茶飯事となっている昨今にあっては、
こういう展開の方が新鮮にさえ感じてしまう。
この1ヶ月、森友・加計学園問題、或いは日大アメフト部の危険行為といったニュースが連日放送され、
国会での答弁や記者会見で語られる常識ある大人たちの言葉がいかにも真実からかけ離れ、
自己保身にしか見えず、日本中にモヤモヤ感が漂っていた。
そういう時代だからこそ、良識ある作品を見て、とても清々しい気持ちになれたのだと思う。
DATA
日本映画/2017年/112分/シネマスコープ/
監督(永井聡)/脚本(坂口理子)/原作(眉月じゅん)/
製作(市川南)/音楽(伊藤ゴロー)/
出演(小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、濱田マリ、吉田羊)