「きっと、星のせいじゃない。」
−THE FAULT IN OUR STARS−
 
 
 
この映画の主人公、17歳のヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)は末期のガン患者。
あ〜、きっと可哀想な話で、悲しくなるんだろうなと思う。
そういう話は映画や本などでたくさん見聞きしてきたから、
今更、それほど見たくないし、既視感をもってしまって感動できないかもしれないな。
別に見なくてもいいかな、と思ったりしていた…。

この映画について、「泣かそうとするのが不快」という感想があったが、
その気持ち、少しはわかる。
「感動しなければ」みたいに変に力んでしまうと、
作品の本質以外のところで気が散ってしまい、感動どころではなくなってしまうことがある。
この手の話になると、武者小路実篤の「愛と死」を思い出すことが多い。
タイトルに「死」とあるにもかかわらず、僕は何の先入観ももたずに読み進み、
ページを捲った先に書かれていた結末に、高校通学の電車内であわや号泣するところであった。
今でもできるだけニュートラルな心で映画をみようとしているが、
あの頃のような真っ白な状態には、なかなかなれないものである…。

といったような葛藤も若干あったが、この作品に関しては全くの杞憂であった。
実に些細なことかもしれないが、僕はヘイゼル役のシャイリーン・ウッドリーの声を聞いた瞬間に、
す〜と入り込めてしまった。
ポスト・ジェニファー・ローレンスとも言われているそうだが、
ハスキーな声、自分の意思をハッキリ表明する聡明さがよく似ていて、魅力的な女優である。
一方、ヘイゼルに一目惚れする青年オーガスタス(アンセル・エルゴート)の好感度も実に高く、
この二人の行く末をしっかり見届けたい一身で、物語の世界に没入することができた。
原作者のジョン・グリーンは、ガンにより16歳で亡くなった少女との友情からインスピレーションを受けて、
この小説を書いたという。
彼女の人生を悲劇だと見なすのではなく、病を抱えた人の人生の広さ、深さについて書きたかったそうだ。

この物語の肝は、死に直面しているヘイゼルとオーガスタスの死生観が真逆であるところだろう。
自分が忘れられることを恐れ、名声を得て自分の痕跡を残したいと強く願うオーガスタスは、
片足切断という大手術のお陰で骨肉腫の再発を免れ、生への希望に満ちている。
一方のヘイゼルは、14歳で死にかけた経験もあり、
「人はいつか死に絶え、クレオパトラもモハメド・アリもやがて忘れられる」と吐き捨てる。
自分は爆弾、いつか爆発して迷惑をかけてしまうからと、
ヘイゼルはオーガスタスとの関係にブレーキをかけてしまうのだが、
互いの存在によって二人の死生観も変わってゆき、限られた日々の中に永遠を知るのである。

これは、涙だけの物語ではない。
無理に泣くこともないし、そもそもヒロインは、メソメソなんかしていない。
明日も来るし、たぶん、来年も生きているだろうと思ってる人が、
その価値に気付ける作品だろう。
ハッと気付いた瞬間、二人の運命に自然と涙が出てしまうだけだろう。
 
   
DATA
米国映画/2014年/126分/ヴィスタ/
監督(ジョシュ・ブーン)/脚本(スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー)/原作(ジョン・グリーン)/
製作(ウィク・ゴッドフリー他)/音楽(マイク・モーギス&ナサニエル・ウォルコット)/
出演(シャイリーン・ウッドリー、アンセル・エルゴート、ローラ・ダーン、サム・トラメル、ウィレム・デフォー)