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「キサラギ」
予告編をみると、見ようか見まいか躊躇してしまうが、
前評判どおり、とにかく笑える映画だった。
はじめから終わりまでずっと笑えて、さらに、「おまけ」もついているという感じ。
その「おまけ」とは、気持ちよく騙されて味わう「爽快感」、
そして、意外と人間も捨てたもんじゃないという「感動」だろうか。
見終わったときに、とても得した気分がした。
この風変わりな物語の舞台となるのは、とある高層ビルの最上階にある一室。
1年前に自殺したグラビアアイドル、如月ミキの追悼会がここで行われる。
ふだんはネット上のつき合いしかない5人のミキファンが初めてここに集結するのだが、
5人の普通ではない個性が、このコメディ映画の原材料である。
狂言回し的な役割の家元(小栗旬)、クールでカッコイイ、オダ・ユウジ(ユースケ・サンタマリア)、
とにかくにぎやかでうるさいスネーク(小出恵介)、不気味な雰囲気をかもしている中年男のイチゴ娘(香川照之)、
常に話題に乗り遅れるのろまの安男(塚地武雄)。
みんなどこか変で、存在自体が可笑しくも魅力的な登場人物たち。
この5人が、さまざまに味付けされながら、物語の進展とともに七変化ていくところが、
この映画のレシピである。
「ネット上だけの知り合いの初めてのオフ会」というシチュエーションゆえに、
「え、お前、何者なのよ?」みたいな登場人物相互のリアクションを、
見ている観客も同時に味わいながら、そこに確かなリアリティがある。
人物設定もよくできているが、それを演じきった5人の役者の力量もすばらしかった。
映画のタイトルにもなっている如月ミキは、1年前に自殺している。
という出だしが、いきなり他殺説へと変化し、さらに、なんとなく集まった5人が、
それぞれが容疑者になっていく予想外の展開は、ミステリー映画としても実に面白い!
「12人の怒れる男」が好きだという脚本家の古沢良太氏(1973年生まれ)は、
今作を密室劇仕立てにし、5人は部屋の中から一歩も出ないのだが、
一瞬も単調になることなく、ハラハラドキドキがラストまでずっと続く。
「真犯人は誰か?」という謎解きをしながら、随所に笑えるシーンが盛り込まれ、
さらには、とても爽やかな感動が待っているという脚本は見事という他ない。
古沢氏が初めて脚本を手掛けた映画が日本アカデミー脚本賞を受賞した
「ALWAYS 三丁目の夕日」というのも、納得である。
監督は、佐藤祐一氏。
映画デビューは、2005年の「プレイ」である。
名前は知らなかったが、テレビドラマ「古畑任三郎」を手掛けた監督と知って、これもなるほどと思えた。
Windows95の登場以降、インターネットは急速に普及し、
ある意味で世界は小さくなり、人と人のつながり方にも大きな変化をもたらした。
ネット上の人間関係は濃密のようで希薄、密接のようで遠い。
なんとなく錯覚していて、だから、実際に会ったときに、
いろんな誤解や間違いが生じ、笑いや感動を生むのかもしれない。
5人の出会いが偶然ではなく、宇宙の星々と同じように必然であると、
妙にロマンチックで哲学的な結末へと結ばれていくラストが、
それなりに説得力があり感動的なのは、
脚本の確かさと演出力と、そして役者のうまさが見事に融合した成果であろう。
大作とか名作とは違うけれど、とってもお得感のある映画である。
シネクイント
DATA
日本映画/2007年/監督(佐藤祐一)/原作・脚本(古沢良太)/
エグゼクティブ・プロデューサー(三宅澄二)/音楽(佐藤直紀)/
出演(小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雄、香川照之)
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