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「王になった男」
-Became King-
韓国のアカデミー賞「大鐘賞」では、史上最多の15部門受賞!
観客動員数1,234万人は、約5千万人の人口を考えると、驚異的といっていい。
韓国映画の評価は以前からかなり高いが、今作もその代表例に数えられることだろう。
「僕が9歳だったころ」(04)など個人的にも大好きな韓国作品が多いが、
儒教の影響が色濃く残っているせいか、目上の人を敬ったり、親族を大切にするシーンなどが
劇中でもよく登場し、ひと昔前の日本を見るようで微笑ましくなる。
本作の舞台は17世紀、実在した朝鮮王朝15代の王・光海(イ・ビョンホン)の時代である。
光海が残した日記の中の「隠すべき事は、残すべからず」という一文からイマジネーションを膨らませ、
ファン・ジョユン(脚本)が創り上げたのが、15日間、影武者が王になるというフィクションである。
オレオレ詐欺に始まり、ネット時代には様々な「なりすまし」犯罪が増えているが、
そういう意味では、この物語もまた古き世の「なりますし」事件ともいえる。
変身願望というのは、万人の心の中に潜んでいるものなのだろう。
主人公である道化師ハソン(イ・ビョンホンの二役)が王の影武者として経験する宮中での豪華な食事、
10数人にも及ぶ若き妾たち、庶民目線で見ると甚だ不思議な慣習がユーモアいっぱいに描かれ、とても面白い。
王の意を受けた忠臣ホ・ギュン(リュ・スンリョン)が影武者であるハソンに命を下し、
ハソンは言われるがままに、王としてホ・ギュンら家臣に命令を下す。
このあべこべなやりとりがコミカルに描かれ、前半は結構、笑える展開が続く。
しかし、この作品が冒頭のような高い評価を得、多くの人に支持されるのは、ただ可笑しいだけではなく、
一介の道化師であったハソンが日一日と「王」になっていく様に感動するからだろう。
秘密を知らされていない「生真面目すぎる」卜武将(キム・イングォン)とのやりとりや、
同じく王の替え玉とは知らぬ王妃(ハン・ヒョジュ)との駆け引きなど緩急をつけた見所が随所にあるが、
とりわけクライマックスの演説は、心に深く響いてくる。
韓流スターに熱を上げている日本のオバ様でなくとも、このイ・ビョンホンの演技には、
大きな感銘を受けてしまうに違いない。
それにしても、騙された。
「トガニ〜幼き瞳の告発」(11)で、少女らを餌食にしたいかがわしい校長を怪演したチャン・グァンが
今作ではチョ内官として、ハソン扮する王の近くで動き回る。
この一見善良なる人物が、いつ豹変し、裏で悪事を働くやらハラハラしながら見てしまった。
そう、疑心暗鬼もまた、この作品のテーマといえる。
疑い、恐れる気持ちが王を暴君とし、結果として民意から離れた政をしてしまうことになる。
ラストシーンは、なかなかである。
ふと、昔みた「愛と青春の旅立ち」(82)を思い出した。
鬼軍曹(ルイス・コゼット・ジュニア)が士官、つまり自分の上官となったザック(リチャード・ギア)に
敬意を表して、敬礼するシーン。
個人につきまとう「肩書」と、その人自身の「人格」が交錯するややこしい人間社会の中で
真の友情が生まれる瞬間が、実に清々しく感動的に描かれる。
確かに、見て損はない秀作だ!
DATA
韓国映画/2012年/131分/シネスコ/
監督(チュ・チャンミン)/製作(イム・サンジン他)/脚本(ファン・ジョユン)/音楽(モグ、キム・ジュンソン)/
出演(イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ、キム・イングォン、チャン・グァン)/字幕(根本理恵)
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