「鍵泥棒のメソッド」
-KEY OF LIFE-
 
 
 
ネタバレせずに書くのが難しい作品なので、少々ご勘弁を。
売れない極貧の役者桜井(堺雅人)とひょんなことから記憶を失った
伝説の殺し屋コンドウ(香川照之)の人生が入れ替わる。
さらに、訳あって期限付きで婚活している雑誌社の編集長水嶋香苗(広末涼子)が、
入れ替わった後の桜井(つまりはコンドウ)にプロポーズするというややこしくて可笑しな話。
笑えるのは、圧倒的に前半である。
怖面の殺し屋コンドウが贅沢な暮らしから一転してボロアパートでの貧しい生活に転落する一方、
自殺未遂するほど追い詰められていた桜井は、
慣れない外車を乗り回し、高級マンション暮らしですっかり羽振りがよい。
「境遇の違いで、人間はどれだけ変わってしまうのか?」って、興味深いテーマである。
極端に振れた登場人物の設定で、どちらの経験もない一般ピープルは、
身を乗り出して見てしまうはず。
これぞ、映画の醍醐味に違いない!
 
何と言っても可笑しいのは、「記憶をなくしたコンドウ」である。
キッチリとした「仕事」をするコンドウの性格は、記憶をなくしてからも健在である。
演技の勉強なども基本からマジメに取り組むので、たちまち役者として頭角を現す。
「健康で」「頑張り屋」を結婚相手の条件にしていた香苗が、
「健康で」「頑張り屋」そのものの桜井=コンドウに好意をもつようになるのも納得の展開だが、
実のところは「殺し屋」なので、ハラハラしながら笑うという複雑で不思議なテイストがある。
唯一、事実を知っている本物の桜井は、コンドウが短期間のうちに役者の仕事をもらい、
結婚相手まで見つける様子に慌てるのだが、
そこへヤクザの工藤(荒川良々)から殺しの依頼がきてしまう…。
 
コンドウが記憶を取り戻してからの後半は、ちょっとしたハードボイルドである。
興味深いのは、入れ替わりがあっても、ちゃんと入れ替わらない部分が残っていて、
そここそが「その人」なんだというところ。
「境遇が違っても、人間の本質は変わらない」という監督なりの回答なのかもしれない。
香苗のキャラがかなり普通じゃなくても共感できるのは、
彼女が桜井=コンドウの本質を見抜く女性として描かれているからだろう。
コメディ・タッチではあるけど、登場人物らはしっかりリアルに人物描写されていて、
監督・脚本の内田氏の仕事ぶりは、キッチリとしたコンドウのようである。
 
今作のあと、内田監督の前作「アフタースクール」をDVDで見たが、
斬新なストーリーで素晴らしい作品だった。
全く予想できない結末に気持ちよく騙されてしまうし、
物語の中に提示された疑問符には、キッチリと回答が示され、
見終えたときのスッキリ感は格別である。
「中学を早く卒業しろよ」と世間知らずをバカにされた中学教師の神野(大泉洋)が
怪しい探偵北野(佐々木蔵之介)に対し、
「中学なんてどうだっていい。わかったような顔して勝手にひねくれているお前自身が問題なんだよ」
と言い放つシーンは痛快そのものだった。
タイトルにもなっている「放課後」が、謎解きと共に繋がるクライマックスも爽やかに感動できるし、
ラストの大泉洋扮する神野には、多くの人の心が鷲掴みになったんじゃないだろうか。
直後に続く、堺雅人のオチもなかなかよかった。
 
内田監督のQ&A天こ盛り映画、大変よいです!
 
 
 
DATA
日本映画/2012年/128分/アメリカンビスタ/
監督・脚本(内田けんじ)/製作(根上哲ほか)/音楽(田中ユウスケ)/
出演(堺雅人、広末涼子、香川照之、荒川良々、森口瑤子、小野武彦)