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「私の頭の中の消しゴム」
心が引き裂かれるような気持ちで映画をみていた。
限りなく切なく悲しい物語だけど、見終えたときはとても澄んだ気持ちになっていた。
原作は、永作博美と緒方直人が主役を演じたTVドラマ「Pure Soul〜君が僕を忘れても〜(2001.4〜6)」。
TVの方は見てないけど、「Pure Soul」ってタイトルは、とてもピッタリだと思った。
主役の二人がとてもよかった。
無骨な感じで才能もある若き建築家チョルス(チョン・ウソン)と
ファッションデザイナーながらいかにも良妻賢母という感じのスジン(ソン・イェジン)。
二人の出会いは、コンビニの出入口でぶつかりそうになるというちょっとなさそうなもの。
そこに大きな意味はないと思うが、
「人は3秒で恋に落ちる」という言葉もあるくらいなので、
こういう出逢いもあるよ、という意図もあるのかもしれない…。
どういう二人かということは、つき合う中から次第に明らかになってゆく。
その辺の流れはごく自然でテンポもよく、実によく練られたシナリオだと思える。
スジンは、社長令嬢として上品で優雅に育ち、優しさと芯の強さをもった魅力的女性であるが、
不倫の恋に破れ、荒んだ気持ちになっているところ。
一方のチョルスは、無愛想で野性的、タフガイという印象だが、
実は幼い頃に母親に捨てられた過去の傷が癒えず、人を愛しきれない弱さを内包している。
スジンが外柔内剛だとすれば、チョルスはその反対といっていいかもしれない。
そんな二人が自分にない部分に惹かれ合いながら、愛を深めていく様子がとても丁寧に描かれていく。
途中に空の雲が流れていくシーンや街の風景などが早回しで挿入されているのも、
二人の愛がゆっくりしっかりと醸成されていることを感じされてくれる。
二人の幸せなシーンを見ていて、90年代のトレンディ・ドラマが懐かく思い出された。
主演の二人、チョン・ウソンとソン・イェジンは、スタイリッシュで容姿端麗、どのシーンでも「いい絵」になる。
いずれ悲しい出来事が起こるということを観客は薄々知っているのだが、
それゆえか、二人の愛は、限りなく無邪気で純粋で微笑ましい。
イ・ジェハン監督は、今作が長編2作目になる(71年生まれ)。
「お涙頂戴のメロドラマは好きではない…。観客の同情を買うのではなく、
最後まで強い意志力をもち続け、絶望の向こうに希望を見せるのです。」
という言葉どおり、僕らは主人公二人の意志の力、深い愛の力を見て、感動するのだろうと思う。
前半、自分を捨てた母親を絶対に許そうとしないチョルスに、
「許すということは、心の中に1つ部屋を作ることなの」とスジンが言うシーンがある。
親に捨てられたこともない人間がわかったようなことを言うな、となるわけだが、
そこで諦めないスジンと、そしてチョルスに感動するのである。
その言葉が、チョルスを預かり育てた大工の棟梁の言葉だったという話のつながりもよかった。
「本物の大工は、心の中にも家を作れる人間のことなんだ」と。
この作品には、心に書き留めておきたい台詞がたくさん出てくる。
前半で十分に二人を理解し、二人の愛に共感してしまった観客は、
スジンが発病してからの後半、ずっと泣くことになる。
途切れ途切れの記憶をたよりにバッティング・センターへたどり着くシーン、
チョルスに向かって昔の不倫相手の名を言ってしまったあと、記憶が戻ったときに書く手紙のシーン、
その手紙を読んだチョルスが彼女を追いかけるシーン…。
彼女が書いた手紙は、相手を思いやる純粋な愛にあふれ、僕らに「愛」を教えてくれる。
エンディングは、とても美しく感動的だ。
ネタバレになるので書かないが、チョルスが「その言葉」を初めて口にして終わる。
いい映画を見たという以上に、「いい人」を見たなぁという印象が残っていた。
池袋シネマサンシャイン
DATA
韓国映画/2004年/監督・脚本(イ・ジェハン)/製作(チャ・スンジェ)/
/撮影(イ・ジュンギュ)/音楽(キム・テウォン)/
出演(チョン・ウソン、ソン・イェジン、ペク・チョンハク、イ・ソンジン、キム・ヒリョン)
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