「ジョゼと虎と魚たち」
 
 
 
主役の恒夫(妻夫木聡)が、なかなかいい感じである。
「今どきの大学生」恒夫は、可愛い彼女が何人かいて、まるで息するのと同じように肉体関係に興じ、
深く考え込むことも悩むこともなく、かといって軽薄なわけでもなく、とってもナイスな好青年である。
冒険心というような大仰さはないが、どんな世界へも飛び込んでゆけるしなやかさをもっている。
そんなイケメン=恒夫は、ノリコ(江口徳子)とつき合っていながら、
同じ大学生のとびきりの美女、香苗(上野樹里)ともつき合い始める。
が、さらに、ひょんなことから「ジョゼ」と名乗る不思議な女の子の家に出入りするようにもなる。
何をするにも躊躇がなく、無欲というか、何事にもこだわらない軽いノリが「今どきの感性」を感じさせる。
 
もうひとりの主役が、くみ子(池脇千鶴)。
読書家のくみ子が愛読しているサガンの小説に出てくる女の子の名前が、「ジョゼ」である。
先天的に足の不自由なくみ子は、ずっと家の押入の中で本を読み、自分の世界の中で生きてきた。
彼女は、小さな古家の暗い押入の中で生きてきた。
幸せと不幸せを区別せず、自分を「ジョゼ」とだけ呼んで坦々と生きてきた。
そこへ、ちょっとした好奇心から恒夫という青年が入ってくる。
恒夫にとっては、ノリコとも香苗とも違う雰囲気をもったジョゼにちょっとした興味をもっただけかもしれない。
その気になれば、何人だって彼女をものにできる。
福祉とか何とか、そういう大袈裟なものではなく、「ただ何となく」である。
 
「目を閉じて。」とジョゼが恒夫に言う。
「真っ暗な深海にいる魚や貝。私はそこから来たの。」
とジョゼが言うシーンが深く印象に残る。
 
くるりの音楽がとてもいい。
「ジョゼのテーマ」の旋律が孤独であるがゆえに気丈な彼女を音で描く。
恒夫とジョゼが初めて旅に出るときに流れるテーマ曲「ハイウェイ」。
グッと抑えたボーカル。
でも抑えきれない情熱。
愛する気持ちがどんどんあふれ出てくる。
幸せに満ちた、まばゆい浜辺のシーン。
そして、ラストシーン。
 
何でも軽くやってのけたはずの恒夫が初めてみせる姿に、心打たれる。
 
 
 
DATA
日本映画/2003年/監督(犬童一心)/製作(久保田修、小川真司)/
/脚本(渡辺あや)/原作(田辺聖子)/音楽(くるり)
出演(妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新屋英子)